【第7回】2027年度予算から本格化する「責任ある積極財政」に向けた自治体・企業の担当者のアクション
1. 2027年度予算から本格化する「責任ある積極財政」がもたらす構造変化
骨太の方針2026は、「『責任ある積極財政』元年」として、従来の予算編成からの転換を打ち出しました。政府は、物価・賃金や名目経済規模の変化を予算に的確に反映するとともに、危機管理投資・成長投資を重点的に進める方針を示しています。
その考え方が具体的な予算制度として本格的に現れるのが、令和9年度(2027年度)予算です。政府は、通常の歳出とは別に『「強く豊かな日本」投資枠』を設け、真に効果の高い投資支援については要求上限を設けず、複数年度の計画を基本とした予算措置を可能とする方向を示しています。また、基金についても、「予算措置は原則3年以内」とする現行ルールの不適用を含めた見直しが検討されています。

これは、国の予算編成が、単年度の歳出抑制を重視する考え方から、財政規律を維持しながらも、中長期的な成長や民間投資の誘発につながる分野へ重点的に資金を配分する方向へ転換することを意味します。
自治体や地域で事業を展開する企業にとっても、補助金を活用した単年度の事業実施だけではなく、国の成長戦略や投資方針を踏まえながら、複数年度で地域課題の解決と経済的・社会的な成果を生み出す事業を構想することが、これまで以上に重要になります。
2. 自治体担当者のアクションプラン
自治体の首長や幹部職員、担当者は、国の交付金や補助金を「どう獲得するか」ではなく、「どう活用して地域に産業を根付かせるか」という経営者視点での意思決定が必要です。
- アクション1:10年先を見据えた「戦略産業クラスター」の青写真作成
骨太の方針で示された「地域未来戦略」を基に、自地域にどのような産業(GX、スマート農業、次世代モビリティ等)を誘致・育成するのか、中長期的なビジョンを策定してください。 - アクション2:「単年度予算」から「複数年プロジェクト」への移行
企業版ふるさと納税などの外部資金を活用し、3〜5年のスパンで完結する事業計画を立てます。これにより、企業側も投資対効果を算定しやすくなり、本格的な参画を引き出せます。 - アクション3:企業を「スポンサー」ではなく「事業パートナー」として扱う
資金を出してもらうだけの関係性は長続きしません。企業の技術を実証するためのフィールド(公共施設や遊休地)の提供や、規制緩和の特区申請など、自治体側から企業に対して「事業環境(アセット)」を提供する姿勢が必須です。
3. 企業担当者のアクションプラン
企業の経営陣や事業責任者は、地域を「社会貢献(CSR)の対象」から「新たな事業基盤・実証フィールド」へと再定義する必要があります。
- アクション1:企業版ふるさと納税の「事業開発費」化
寄附の予算をCSR部門から経営企画・新規事業開発部門へと移管し、「R&D(研究開発)投資」として位置づけてください。これにより、社内の優秀な人材を地域課題解決プロジェクトに投入する大義名分が生まれます。 - アクション2:「非機能要件」を組み込んだ持続可能なビジネスモデル設計
最新技術(AI、ドローン、自動運転など)を地域に持ち込む際は、技術の実証(PoC)で終わらせないことが重要です。システムの運用保守、セキュリティ、現地の雇用創出といった「非機能要件」のコストを事前に設計し、ビジネスとして自走する計画を立ててください。 - アクション3:地域課題を通じた次世代リーダーの育成(越境学習)
労働供給制約が深刻化する中、社員の成長機会は社内だけでは完結しません。自社の社員を自治体のプロジェクトに派遣し、リソースの限られた環境で事業を推進させることで、圧倒的な課題解決力を持つリーダーを育成する枠組み(人材循環エコシステム)を構築します。
4. 身近な人を幸せにする経済循環の構築
2011年の東日本大震災以降、地方創生の最前線で多くの地域課題に向き合ってきました。それは、「身近な人を幸せにできれば、広く幸せな人が増える」ということです。
国のマクロ政策が「積極投資」へと転換する今、その資金と制度を現場の力に変えるのは、自治体と企業の連携に他なりません。双方が相互の持続的な利益を設計し、覚悟を持って共同投資を行うことで、地域経済は確実に力強さを取り戻します。

2027年度の「積極財政元年」に向けた準備は、すでに始まっています。本連載が、皆様の果断な意思決定と実行への一助となれば幸いです。
株式会社カルティブ 池田 清 (プロフィール)
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本記事で解説した国の政策方針は、各地域における具体的なプロジェクトとして既に動き出しています。
貴社の新規事業開発やESG投資の戦略に合致する、自治体との共創のフィールドを以下の「プロジェクト一覧」よりご確認ください。