人材派遣型企業版ふるさと納税とは|仕組み・メリット・活用の流れを解説
人材派遣型企業版ふるさと納税とは、企業が地方公共団体の地方創生事業に寄附を行うとともに、自社の人材を地方公共団体等へ派遣し、寄附活用事業の実施を支援する仕組みです。

企業版ふるさと納税による資金面の支援と、企業人材が持つ専門知識やノウハウによる実務支援を組み合わせられる点が、人材派遣型の特徴です。
派遣された人材は、地方公共団体や寄附活用事業に関係する団体等の職員として任用・採用され、企業が寄附した地方創生事業に従事します。
企業にとっては、金銭による寄附だけでなく、自社の人材や専門性を活かして地域課題の解決に関われる制度です。
このページでは、人材派遣型企業版ふるさと納税の仕組み、企業にとってのメリット、活用までの流れ、実施前に確認すべき注意点を解説します。
このページでわかること
- 人材派遣型企業版ふるさと納税の基本的な仕組み
- 通常の企業版ふるさと納税との違い
- 企業が人材派遣型を活用するメリット
- 活用に向けた手続きと社内検討のポイント
- 経済的利益の禁止など、制度利用時の注意点
人材派遣型企業版ふるさと納税の仕組み
人材派遣型では、企業が地方公共団体の寄附活用事業に対して、人件費を含む事業費への寄附を行います。あわせて、企業の人材が地方公共団体等の職員として任用・採用され、対象となる事業に従事します。
単に企業の社員が自治体へ助言したり、業務委託や連携協定に基づいて支援したりするだけでは、人材派遣型企業版ふるさと納税には該当しません。
派遣された人材が、地方公共団体または寄附活用事業に関係する団体等において、職員として任用・採用されることが必要です。
基本的な流れ
- 企業が地方公共団体の寄附活用事業を選定する
- 企業と地方公共団体が、派遣人材の役割や勤務条件を調整する
- 企業が人件費を含む事業費に対して寄附を行う
- 企業の人材が地方公共団体等の職員として任用・採用される
- 派遣された人材が寄附活用事業に従事する
- 企業が地方公共団体から交付された受領証をもとに税務申告を行う
企業と地方公共団体は、派遣する人材の役割、従事する事業、勤務期間、勤務形態などについて、事前に十分な協議を行う必要があります。

通常の企業版ふるさと納税との違い
通常の企業版ふるさと納税は、企業が地方公共団体の地方創生事業に金銭による寄附を行う仕組みです。
人材派遣型では、金銭による寄附に加えて、企業の人材が地方公共団体等の職員として事業に従事します。企業の専門人材やノウハウを、地域課題の解決や地方創生事業の推進に活用できる点が大きな違いです。
| 項目 | 通常の企業版ふるさと納税 | 人材派遣型企業版ふるさと納税 |
|---|---|---|
| 主な支援方法 | 金銭による寄附 | 寄附と企業人材の派遣 |
| 企業人材の関与 | 必須ではない | 寄附活用事業への従事が必要 |
| 人材の立場 | 特段の規定なし | 地方公共団体等の職員として任用・採用 |
| 活用しやすい場面 | 幅広い地方創生事業 | 専門人材や実務経験が必要な事業 |
| 企業側の関わり方 | 資金面から支援 | 資金面と人材面の両方から支援 |
人材派遣型を活用する場合でも、寄附の対象となるのは、国が認定した地域再生計画に位置付けられた地方創生事業です。
人材派遣型の主な勤務形態
人材派遣型企業版ふるさと納税では、地方公共団体等が求める役割や、企業側の人材配置に応じて、勤務形態を調整します。
一定期間、地方公共団体等の業務に重点的に従事する形態のほか、派遣元企業の業務と両立しながら、非常勤等の形で寄附活用事業に関わる形態も考えられます。
地方公共団体等の業務に重点的に従事する形態
派遣された企業人材が、一定期間、地方公共団体等の業務に重点的に従事する形態です。
継続的な事業推進や庁内調整が必要なプロジェクトに適しています。
たとえば、次のような事業での活用が考えられます。
- 自治体DXや行政業務改革
- 観光振興や地域ブランディング
- 地域産業の振興や販路開拓
- 脱炭素・再生可能エネルギー施策
- 移住定住や関係人口の創出
- 新規事業や官民連携プロジェクトの推進
派遣元企業の業務と両立して従事する形態
派遣元企業の業務を継続しながら、地方公共団体等の非常勤職員等として寄附活用事業に従事する形態です。
長期間の専任派遣が難しい企業でも、週や月単位で一定の勤務時間を設定し、専門人材の知識や経験を地域課題の解決に活かせる可能性があります。
ただし、勤務時間、報酬、職務内容、兼業許可、情報管理などの条件は、企業と地方公共団体等の間で事前に整理する必要があります。
| 項目 | 重点的に従事する形態 | 派遣元企業の業務と両立する形態 |
|---|---|---|
| 勤務形態 | 地方公共団体等の業務に重点的に従事 | 派遣元企業の業務と両立しながら従事 |
| 向いている事業 | 継続的な事業推進や庁内調整が必要な事業 | 特定分野の助言や限定的な実務支援 |
| 企業側の人材配置 | 一定期間の派遣が必要 | 比較的柔軟に設計しやすい |
| 主な確認事項 | 任用期間、給与、復帰条件、業務内容 | 勤務日数、兼業許可、報酬、情報管理 |
企業が人材派遣型を活用するメリット
人材派遣型企業版ふるさと納税には、税制優遇に加えて、地域課題の解決、人材育成、自治体との関係構築などのメリットがあります。
専門人材やノウハウを地域課題の解決に活かせる
企業が保有する専門知識や実務経験を、地方公共団体の地方創生事業に活用できます。
たとえば、IT企業の人材が自治体DXを支援する、金融機関の人材が地域産業の事業計画策定を支援する、広告・マーケティング分野の人材が観光プロモーションを支援するといった活用が考えられます。
資金を寄附するだけでなく、事業の企画や実施に企業人材が関わることで、企業の強みを活かした地域貢献を行いやすくなります。
社員の人材育成につながる
派遣される社員にとって、自治体組織や地域の関係者と連携しながら課題解決に取り組む経験は、社内業務とは異なる学びの機会になります。
次のような能力や経験を得る機会として活用できます。
- 立場の異なる関係者との合意形成
- 地域課題を起点とした事業設計
- 限られた人員や予算の中でのプロジェクト推進
- 行政制度や公共分野に関する理解
- 新しい環境でのマネジメントやリーダーシップ
人材派遣型は、次世代リーダーの育成や越境学習の一環として活用することも考えられます。
CSR・SDGs・ESGの取り組みとして整理できる
人材派遣型は、企業が持つ人材やノウハウを活用して地域課題の解決を支援する取り組みです。
寄附金額だけでなく、派遣した人材の役割や事業への貢献内容を整理できるため、CSR、SDGs、ESG、人的資本経営などの文脈で社内外へ説明しやすくなります。
ただし、広報を行う際は、寄附の見返りとして事業機会や取引を獲得したと誤解される表現を避ける必要があります。
自治体や地域への理解を深められる
派遣された人材が地域の現場で事業に関わることで、企業は地域の課題、産業構造、行政施策、地域住民のニーズなどを具体的に理解できます。
その結果、自治体との継続的な対話や、地域課題を起点とした新たな連携の検討につながる場合があります。
ただし、寄附や人材派遣によって、自治体との契約、受注、事業機会などが保証されるものではありません。
税制優遇の考え方
人材派遣型企業版ふるさと納税でも、通常の企業版ふるさと納税と同様に、損金算入と法人関係税の税額控除が適用されます。
企業が人件費を含む対象事業の事業費に寄附した場合、企業ごとの税額や所得状況等による上限の範囲内で、寄附額の最大約9割に相当する税負担の軽減効果が見込まれます。
ただし、すべての企業が一律に約9割の税負担軽減を受けられるわけではありません。実際の税額控除額は、法人住民税、法人税、法人事業税の税額や各控除上限によって異なります。
具体的な税務上の取り扱いについては、税理士や顧問会計士等へご確認ください。
人材派遣型が向いている企業
人材派遣型企業版ふるさと納税は、次のような企業に向いています。
- 金銭による寄附だけでなく、人材やノウハウでも地域に貢献したい企業
- 自治体DX、観光、金融、広報、事業開発などの専門人材を有する企業
- 社員の越境学習や次世代リーダー育成に取り組みたい企業
- 地方創生や地域課題を自社のCSR・SDGs方針に位置付けている企業
- 一定期間、社員を地方公共団体等へ派遣できる企業
- 副業や兼業を通じた地域貢献を検討している企業
- 地域との継続的な関係づくりを重視している企業
一方で、派遣の目的や人材の役割が明確でない場合や、自治体側の受入体制が整っていない場合は、派遣後にミスマッチが生じるおそれがあります。
制度の利用を先に決めるのではなく、自治体側の課題と企業側の人材・ノウハウが合致しているかを確認することが重要です。
人材派遣型を活用するまでの流れ
1.活用目的を整理する
まずは、人材派遣型を活用する目的を社内で整理します。
地域貢献、人材育成、専門人材の活用、自治体との連携など、何を重視するかによって、適切な自治体やプロジェクト、派遣人材は異なります。
2.派遣できる人材を検討する
地方公共団体等が抱える課題に対して、どのような知識や経験を持つ社員を派遣できるかを検討します。
職種や専門性だけでなく、本人の希望、派遣期間、勤務場所、家族への影響、派遣終了後の配置なども含めて整理します。
3.自治体・プロジェクトを選定する
企業の方針や派遣人材の専門性と合う自治体・プロジェクトを探します。
自治体側の課題、事業内容、派遣人材に期待する役割、受入担当部署、任用条件などを確認し、具体的な協議を進めます。
4.制度要件と受入条件を確認する
主に次の項目を確認します。
- 対象事業が認定地域再生計画に位置付けられているか
- 寄附先が企業の本社所在地にある地方公共団体ではないか
- 派遣人材が対象事業に従事する職員として任用・採用されるか
- 寄附と人材の任用・採用が同一年度に行われるか
- 寄附額や人件費を含む事業費の考え方が整理されているか
- 寄附の代償として経済的利益が供与されないか
- 派遣期間や勤務条件が明確になっているか
5.派遣条件と役割分担を決める
企業と地方公共団体等との間で、次の条件を整理します。
- 派遣期間
- 勤務日数、勤務時間、勤務場所
- 派遣人材が担当する業務
- 指揮命令や人事評価の方法
- 給与、報酬、手当、旅費等の取り扱い
- 情報管理、秘密保持、個人情報保護
- 事故やトラブルが発生した場合の対応
- 派遣終了後の引き継ぎ
派遣された人材が能力を発揮できるよう、事前に企業、地方公共団体、関係団体等が役割を共有しておく必要があります。
6.社内決裁と寄附手続きを行う
制度要件と派遣条件を確認した後、寄附や人材派遣について社内決裁を行います。
決裁資料には、次の内容を整理しておくと社内説明を進めやすくなります。
- 寄附先と対象事業
- 寄附額
- 派遣する社員と派遣期間
- 社員が担当する業務
- 制度上の要件
- 税制優遇の見込み
- 企業としての地域貢献方針
- 人材育成上の目的
- 想定されるリスクと対応方針
7.事業の実施と成果確認を行う
派遣開始後は、自治体と企業が定期的に進捗を確認します。
派遣人材だけに事業を任せるのではなく、企業側にも相談担当者を置き、必要に応じて業務上の助言や支援を行うことが重要です。
事業終了後は、取り組みの成果、派遣人材の学び、地域への貢献内容などを整理し、今後の連携や人材育成に活かします。
人材派遣型を活用する際の注意点
人材を提供するだけでは対象にならない
企業の社員が自治体に助言したり、業務委託として事業を支援したりするだけでは、人材派遣型企業版ふるさと納税には該当しません。
地方公共団体または寄附活用事業に関係する団体等が、派遣された人材を職員として任用・採用し、寄附活用事業に従事させる必要があります。
寄附と人材の任用・採用時期を確認する
人材派遣型に該当するためには、企業版ふるさと納税による寄附と、派遣人材の任用・採用の時期について、制度要件を満たす必要があります。
寄附日、派遣開始日、任用期間、地方公共団体の予算年度などを事前に確認し、スケジュールを調整してください。
経済的利益を受けることはできない
企業版ふるさと納税では、地方公共団体が寄附企業に対し、寄附の代償として経済的利益を供与することは禁止されています。
人材派遣型を活用したことを理由として、企業が自治体との契約、施設利用、事業上の優遇などを受けることはできません。
自治体の事業を受託する場合も、寄附とは切り離し、公平性と透明性が確保された適正な手続きが必要です。
本社所在地の自治体への寄附は対象外
企業版ふるさと納税では、企業の本社が所在する地方公共団体への寄附は、税制優遇の対象になりません。
支店、営業所、工場などがある自治体への寄附については対象となる場合がありますが、企業の所在地や税務上の取り扱いを事前に確認する必要があります。
税制優遇の効果は企業ごとに異なる
最大約9割という税負担軽減効果は、制度上の控除上限をすべて活用できた場合の上限です。
企業の課税所得、法人住民税額、法人事業税額などによって実際の税額控除額は変わるため、寄附前に税額控除の見込みを確認してください。
派遣人材の受入れに関する情報公開を確認する
地方公共団体等は、透明性を確保するため、寄附企業の人材を受け入れることや、その受入期間などを対外的に公表する場合があります。
企業側も、派遣される社員の個人情報や社内情報の取り扱いを確認したうえで、情報公開の範囲や方法について自治体と協議する必要があります。
自治体・プロジェクトを選ぶポイント
人材派遣型では、企業の人材と自治体の課題が適切に組み合わされているかが重要です。
次の項目を確認しながら、寄附先と派遣先を選定します。
- 自治体が解決したい課題が明確か
- 派遣人材に期待する役割が具体化されているか
- 企業人材の専門性を活かせる事業か
- 自治体側の受入担当者が決まっているか
- 庁内の関係部署と連携できる体制があるか
- 企業が想定する勤務形態に対応できるか
- 派遣終了後も事業を継続できる体制があるか
- 成果を確認するための目標や指標が設定されているか
企業と自治体の認識が一致していないまま派遣を開始すると、派遣人材の業務が曖昧になり、十分な成果を得られない可能性があります。
事前の面談や協議を通じて、課題、役割、勤務条件、目標を具体化することが重要です。
人材派遣型企業版ふるさと納税に関するよくある質問
人材派遣型では、人件費そのものを寄附するのですか?
企業は、派遣人材の人件費を含む寄附活用事業の事業費に対して寄附を行います。
単に社員の人件費を寄附として付け替える仕組みではなく、地方公共団体の地域再生計画に位置付けられた事業への寄附と、事業に従事する人材の派遣を組み合わせる制度です。
派遣元企業の業務を続けながら自治体で働くことはできますか?
勤務形態や任用条件を調整することで、派遣元企業の業務と両立しながら、地方公共団体等の職員として寄附活用事業に従事できる場合があります。
勤務時間、兼業許可、報酬、情報管理などについて、企業と地方公共団体等が事前に条件を整理する必要があります。
社員が自治体に助言するだけでも人材派遣型になりますか?
助言や業務支援を行うだけでは、人材派遣型企業版ふるさと納税には該当しません。
派遣された人材が、地方公共団体または寄附活用事業に関係する団体等の職員として任用・採用され、対象事業に従事する必要があります。
人材派遣型を利用すると税負担は必ず約9割軽減されますか?
必ず約9割軽減されるわけではありません。
損金算入と税額控除を合わせて最大約9割の税負担軽減効果が見込まれますが、実際の控除額は企業ごとの税額や所得状況、各税目の控除上限によって異なります。
寄附をすると自治体から仕事を受注できますか?
寄附を理由として、自治体から仕事を受注できるわけではありません。
寄附の代償として経済的利益を受けることは禁止されています。自治体との契約を行う場合は、寄附とは切り離し、公平性と透明性が確保された適正な手続きが必要です。
人材派遣型企業版ふるさと納税の活用を検討する企業へ
人材派遣型企業版ふるさと納税は、企業が資金だけでなく、人材やノウハウによって地域課題の解決を支援できる仕組みです。
企業の人材配置や自治体の課題に応じて勤務形態を調整することで、自社の専門性を活かした地域貢献や、社員の越境学習につなげられます。
一方で、適切な自治体・プロジェクトの選定、派遣人材の役割設計、任用条件、税務上の取り扱い、経済的利益の禁止など、実施前に整理すべき事項もあります。
企業と自治体の双方が目的と条件を共有し、派遣された人材が専門性を発揮できる環境を整えることが、制度を有効に活用するためのポイントです。
※制度や税務上の取り扱いは変更される場合があります。実際に寄附や人材派遣を行う際は、最新の公式資料を確認するとともに、寄附先の地方公共団体、税理士等へご確認ください。

人材派遣型企業版ふるさと納税について相談する
人材派遣型企業版ふるさと納税の活用には、企業の目的に合う自治体・プロジェクトの選定と、派遣条件の具体的な設計が必要です。
自社の人材やノウハウを地域課題の解決に活かしたい企業の方は、riverへご相談ください。