企業版ふるさと納税の仕組み|税制優遇・条件・寄付の流れを解説
企業版ふるさと納税は、企業が自治体の地方創生事業に寄付することで、損金算入に加えて法人関係税の税額控除を受けられる制度です。制度を活用するには、寄付先の事業や企業側の条件、寄付後の税務手続きなどを正しく理解しておく必要があります。本ページでは、企業・自治体・国の関係から、税制優遇の考え方、寄付の申し出から税務申告までの流れをわかりやすく解説します。

このページでわかること
・企業版ふるさと納税における企業・自治体・国の役割
・損金算入と税額控除によって税負担が軽減される仕組み
・制度を利用できる企業・自治体・地方創生事業の条件
・企業が寄付を検討してから税務申告を行うまでの流れ
・自治体が寄付を受け入れ、事業を実施するまでの流れ
・制度を利用する前に確認しておきたい注意点
企業版ふるさと納税は、企業が自治体の地方創生事業に寄付を行った場合に、損金算入に加えて法人関係税の税額控除を受けられる制度です。
制度を利用するためには、寄付先の自治体が国から地域再生計画の認定を受けていることや、寄付額が1回当たり10万円以上であることなど、一定の条件を満たす必要があります。
ここでは、企業・自治体・国がどのように関わるのか、寄付から税務申告までどのような手続きが必要なのかを、制度の流れに沿って解説します。
企業版ふるさと納税は、企業・自治体・国をつなぐ制度
企業版ふるさと納税の正式名称は「地方創生応援税制」です。
企業が、国の認定を受けた自治体の地方創生事業に寄付を行うことで、損金算入に加えて法人関係税の税額控除を受けられます。
制度は、主に次の三者によって成り立っています。
企業の役割
企業は、自社の方針や関心分野に合った自治体の地方創生事業を選び、自治体へ寄付を行います。
寄付後は、自治体から発行される受領証をもとに、法人税、法人住民税、法人事業税の申告手続きを行います。
自治体の役割
自治体は、地域課題の解決に向けた地方創生事業を計画し、その事業を地域再生計画に位置付けます。
国の認定を受けた地域再生計画に基づいて企業からの寄付を受け入れ、寄付金を活用して事業を実施します。
事業の実施後は、寄付企業や地域住民に対して、寄付金の活用状況や事業成果を報告することも重要です。
国の役割
国は、自治体が作成した地域再生計画を審査・認定し、企業版ふるさと納税の制度を運用します。
企業から自治体へ寄付金を仲介するのではなく、制度の対象となる地方創生事業や税制上の枠組みを整える役割を担います。

税負担が最大約9割軽減される仕組み
通常、企業が自治体へ寄付を行った場合、寄付額の全額を損金に算入できます。
企業版ふるさと納税では、この損金算入による税負担の軽減に加えて、法人住民税、法人税、法人事業税から一定額を差し引く税額控除が適用されます。
損金算入による軽減
自治体への寄付額は、原則として全額を損金に算入できます。
損金に算入することで法人税等の課税所得が減少し、一般的には寄付額の約3割に相当する税負担の軽減効果が生じるとされています。
法人関係税の税額控除
企業版ふるさと納税の対象となる寄付では、損金算入に加えて、寄付額の最大6割を法人関係税から控除できます。
損金算入による軽減効果と税額控除を合わせることで、法人関係税の軽減額は寄付額の最大約9割となり、企業の実質的な負担は最小で約1割となります。
1,000万円を寄付した場合のイメージ
寄付額が1,000万円で、各税目の控除上限まで税制優遇が適用された場合、概算では次のようになります。
・損金算入による軽減効果:約300万円
・法人関係税の税額控除:最大約600万円
・企業の実質的な負担:約100万円
ただし、すべての企業で必ず寄付額の約9割が軽減されるわけではありません。
実際の税額控除額は、企業の課税所得、法人住民税法人税割額、法人税額、法人事業税額、寄付額、各税目の控除上限などによって異なります。
具体的な控除見込額については、税理士などの税務専門家に確認することが重要です。

制度を利用するための主な条件
企業版ふるさと納税の税制優遇を受けるためには、寄付を行う企業と、寄付を受け入れる自治体・事業の双方が制度上の条件を満たしている必要があります。
寄付を行う企業の条件
主な条件は次のとおりです。
・青色申告書を提出している法人であること
・1回当たりの寄付額が10万円以上であること
・企業の本社が所在する地方公共団体への寄付ではないこと
・法人関係税の申告時に必要な手続きを行うこと
ここでいう「本社」とは、登記上の本店所在地だけでなく、地方税法上の「主たる事務所又は事業所」を指します。
本社が所在する地方公共団体への寄付については、通常の損金算入はできますが、企業版ふるさと納税による税額控除の対象にはなりません。
寄付を受ける自治体の条件
寄付先となる自治体は、企業版ふるさと納税の対象となる地域再生計画について、国の認定を受けている必要があります。
また、すべての地方公共団体が制度の対象となるわけではなく、制度上の要件によって対象外となる自治体もあります。
寄付を検討する際は、対象となる自治体であるかを事前に確認することが必要です。
寄付対象となる事業の条件
寄付対象となるのは、国の認定を受けた地域再生計画に位置付けられている地方創生事業です。
自治体が実施する事業であっても、地域再生計画に位置付けられていない場合は、企業版ふるさと納税の税額控除を受けられない可能性があります。
寄付前に、自治体へ次の点を確認しておくと安心です。
・企業版ふるさと納税の対象事業であるか
・地域再生計画に位置付けられているか
・寄付金の具体的な活用予定
・寄付の申し出や納付の方法
・受領証が発行される時期
企業が寄付を行うまでの流れ
企業版ふるさと納税では、寄付先を選んで納付するだけでなく、社内方針の整理、自治体との確認、受領証の管理、税務申告などが必要です。
一般的には、次の流れで進めます。
STEP1 寄付の目的と方針を整理する
まず、自社が企業版ふるさと納税を活用する目的を整理します。
例えば、地域課題の解決、創業地域への貢献、事業と関係する地域への支援、CSR・SDGs方針との整合など、自社が重視するテーマを明確にします。
寄付金額、寄付を実施する時期、希望する地域や分野についても整理しておくと、その後の寄付先選定が進めやすくなります。
STEP2 自治体・地方創生事業を探す
自社の寄付方針に合った自治体や地方創生事業を探します。
地域、事業テーマ、寄付金の使い道、事業の対象者、期待される成果などを比較しながら候補を選定します。
STEP3 自治体へ相談・確認する
候補となる事業が見つかったら、自治体へ問い合わせます。
寄付を申し出る前に、次の事項を確認します。
・企業版ふるさと納税の対象事業であるか
・寄付金の使い道
・寄付の受け入れ時期
・必要な申請書類
・納付方法
・事業の実施予定
・寄付後の報告方法
STEP4 社内決裁を行う
寄付先、寄付額、寄付の目的、税制上の取り扱いなどを整理し、社内決裁を行います。
企業によっては、経営会議、取締役会、稟議手続きなどが必要になるため、決算期や自治体の事業スケジュールも考慮して進めます。
STEP5 寄付申出書を提出する
自治体が指定する様式に沿って、寄付申出書を提出します。
申出書には、企業名、所在地、寄付額、寄付対象事業、連絡先などを記載するのが一般的です。
必要な書類や提出方法は自治体によって異なります。
STEP6 寄付金を納付する
自治体から納付方法の案内を受け、指定された方法で寄付金を納付します。
銀行振込、納付書、オンライン手続きなど、利用できる方法は自治体によって異なります。
STEP7 自治体から受領証を受け取る
自治体が寄付金の入金を確認した後、企業に寄付金の受領証を発行します。
受領証は、法人関係税の申告手続きで必要となる重要な書類です。紛失しないよう、社内で適切に保管します。
STEP8 法人関係税の申告を行う
受領証に基づき、法人税、法人住民税、法人事業税の申告時に、企業版ふるさと納税の税額控除を受けるための手続きを行います。
申告方法や必要書類は税目によって異なるため、顧問税理士や所管の税務署、都道府県、市区町村へ確認してください。

自治体が寄付を受け入れるまでの流れ
自治体側では、寄付を募集する事業の整理、地域再生計画との整合確認、企業との調整、受領証の発行、事業実施後の報告などが必要です。
STEP1 地方創生事業を整理する
自治体が解決したい地域課題と、そのために実施する地方創生事業を整理します。
事業の目的、対象者、実施内容、必要な財源、期待される成果、企業に伝えたいポイントを明確にします。
STEP2 地域再生計画との整合を確認する
寄付を募集する事業が、国の認定を受けた地域再生計画に位置付けられているかを確認します。
既存の地域再生計画で対応できない場合は、必要に応じて計画の変更や認定手続きを検討します。
STEP3 寄付募集情報を発信する
企業が事業内容を理解できるよう、地域課題、事業の目的、寄付金の使い道、期待する成果などを整理して発信します。
単に事業名や予算額を掲載するだけでなく、企業が寄付の意義を判断できる情報を示すことが重要です。
STEP4 企業からの相談・申し出を受け付ける
企業からの問い合わせに対応し、寄付対象事業、寄付金の使い道、申し出方法、納付方法、事業スケジュールなどを説明します。
寄付の受け入れに当たっては、寄付の代償として企業へ経済的利益を供与する内容が含まれていないかも確認します。
STEP5 寄付金を受領し、受領証を発行する
企業からの入金を確認し、寄付金の受領証を発行します。
企業が法人関係税の申告に使用するため、企業名、寄付額、受領日、対象事業などを正確に記載します。
STEP6 事業を実施し、活用状況を報告する
寄付金を地域再生計画に基づく事業へ活用し、事業を実施します。
事業実施後は、寄付企業や地域住民に対して、寄付金の活用内容、事業の進捗、得られた成果などを報告します。
継続的な情報発信は、制度の透明性を高め、企業との信頼関係を築くうえでも重要です。
企業版ふるさと納税を利用する際の注意点
税負担が必ず9割軽減されるわけではない
「最大約9割」は、損金算入と税額控除が上限まで適用された場合の軽減効果です。
企業の課税状況や各税目の控除上限によっては、税負担の軽減額が9割を下回ることがあります。
寄付額を決定する前に、税理士などへ控除見込額を確認してください。
寄付の見返りとして経済的利益は受けられない
企業版ふるさと納税では、寄付を行うことの代償として、自治体が寄付企業へ経済的利益を供与することは禁止されています。
個人版ふるさと納税のような返礼品を受け取ることはできません。
また、寄付の見返りとして、自治体との契約、補助金、許認可、施設の優先利用などを約束してもらうこともできません。
寄付前に対象事業であることを確認する
自治体が実施するすべての事業が、企業版ふるさと納税の対象になるわけではありません。
寄付の申し出や納付を行う前に、国の認定を受けた地域再生計画に位置付けられている事業であるかを自治体へ確認してください。
受領証を適切に管理する
税額控除の申告には、自治体から発行される受領証が必要です。
受領証の受け取り時期や社内での保管担当をあらかじめ決め、税務申告まで適切に管理することが重要です。
riverによる企業版ふるさと納税の活用支援
企業版ふるさと納税を円滑に進めるためには、制度理解だけでなく、寄付目的の整理、プロジェクト探し、自治体との調整、社内決裁、寄付手続きなど、複数の工程を進める必要があります。
地域課題解決プラットフォーム「river」では、企業と自治体の双方に対して、企業版ふるさと納税の活用を支援しています。
企業への支援
・企業版ふるさと納税制度の説明
・寄付目的、地域、テーマ、予算の整理
・寄付先となる自治体・プロジェクトの提案
・自治体との連絡・調整
・寄付手続きに関するサポート
自治体への支援
・地域課題と寄付募集事業の整理
・企業に伝わるプロジェクト情報の作成
・寄付募集に向けた情報発信
・企業とのマッチング支援
・寄付受領後の情報発信・報告支援
「企ふるオンライン」では、自治体が掲載する地方創生プロジェクトを検索し、寄付の相談や申し込みを進めることができます。
企業版ふるさと納税の仕組みに関するよくある質問
企業版ふるさと納税では、寄付額の9割が必ず軽減されますか?
必ず9割が軽減されるわけではありません。
損金算入と税額控除が上限まで適用された場合に、寄付額の最大約9割の法人関係税が軽減されます。実際の軽減額は、企業の課税状況や各税目の控除上限によって異なります。
本社所在地の自治体へ寄付できますか?
寄付を行うこと自体は可能ですが、地方税法上の主たる事務所または事業所が所在する地方公共団体への寄付は、企業版ふるさと納税による税額控除の対象にはなりません。
通常の自治体への寄付として、損金算入による取り扱いとなります。
支店や営業所がある自治体へ寄付できますか?
本社に当たる「主たる事務所又は事業所」が所在する地方公共団体でなければ、原則として税額控除の対象となる可能性があります。
ただし、企業の事業所の状況や地方税の申告関係によって判断が必要になる場合があるため、自治体や税務専門家へ確認してください。
どの自治体の事業にも寄付できますか?
すべての自治体・事業が対象となるわけではありません。
国の認定を受けた地域再生計画に位置付けられている地方創生事業への寄付であることが必要です。また、制度上、対象外となる地方公共団体もあります。
税額控除を受けるためには何が必要ですか?
自治体から発行される受領証を受け取り、法人税、法人住民税、法人事業税の申告時に必要な手続きを行います。
申告方法や添付・保管書類については、税理士または所管の税務署、都道府県、市区町村へ確認してください。
企業版ふるさと納税では返礼品を受け取れますか?
受け取れません。
企業版ふるさと納税では、寄付の代償として自治体が企業へ経済的利益を供与することは禁止されています。個人版ふるさと納税のような返礼品制度はありません。
企業版ふるさと納税の活用についてご相談ください
寄付を検討している企業の方へ
寄付の目的整理から、地域・プロジェクトの選定、自治体との調整、寄付手続きまで支援します。
寄付募集を進めたい自治体の方へ
地域課題の整理、寄付募集プロジェクトの設計、企業への情報発信、マッチングまで支援します。