【地方創生起業支援事業】地域の社会課題解決に資する起業支援に向けて ~内閣府セミナー解説~

内閣府主催「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」の分科会として、株式会社カルティブが企画・運営する『地方創生制度活用シリーズセミナー』。本シリーズは、各省庁で制度を企画・運営する担当者から、制度の詳細な仕組みのみならず「施策に込めた想い」までを直接学べる場として開催しています。

1. 事業の背景と制度の位置づけ

人口減少が進む地域では、担い手不足によって生活に必要なサービスそのものが成り立たなくなりつつあります。こうした地域課題・社会課題を「起業」という手段で解決しようとする人を後押しするために設けられているのが、地方創生起業支援事業です。

本事業は、国から都道府県または市町村等に交付される「地域未来交付金」のうち、地域未来推進型(移住・起業・就業型)のメニューの1つに位置づけられています。国が起業者へ直接支援金を交付する仕組みではなく、都道府県または市町村が起業支援金の補助制度を実施し、その費用の一部を国が交付するという二段構えの構造である点が、制度理解の出発点となります。

2. 制度の概要と実施スキーム

申請主体である都道府県または市町村が実施計画で定める「社会的事業」の分野において、デジタル技術を活用し、地域課題の解決を目的とした起業等を行う方に対して、必要経費の一部を起業支援金として支援します。

市町村単独での活用が可能に

これまで申請主体は都道府県のみでしたが、令和7年度の第2回募集から、市町村が単独で活用できるよう拡充されました。起業支援に取り組みたい市町村にとって、制度活用の間口が広がっています。

執行団体を通じた間接執行

原則として、都道府県または市町村が公募により執行団体を選定し、その執行団体に補助を実施する間接執行方式です。執行団体は公募から採択までの一連の業務に加え、起業者への伴走支援を担い、これらに要する事務経費も補助対象とすることができます。

対象地域

東京圏以外の道府県・市町村、および東京圏内の条件不利地域が対象です。

自治体が独自要件を設定できる点に注意

国の規定の範囲内で、自治体が独自に要件を設定することが可能です。実際に、地域の現状や課題に合わせて対象となる社会的事業の分野を限定したり、移住を要件としている都道府県もあります。そのため、起業支援金の活用を検討する方は、お住まいの都道府県・市町村の制度内容を個別に確認する必要があります

3. 対象経費・補助額と支給要件

対象経費と補助額

対象経費は「起業等に要する経費(=起業支援金)」と「執行団体等の事務経費」の2つに大別されます。起業支援金の対象となるのは、従業員などの人件費、店舗等の賃料、設備費等です。

  • 補助上限額:1件あたり200万円以内
  • 補助率:1/2
  • 負担内訳:国100万円/都道府県または市町村100万円

例えば対象経費400万円の事業が採択された場合、最大200万円が起業支援金として交付され、残る200万円は起業者自身の負担となります。

支給要件(①〜③のすべてを満たすこと)

  • ① 対象地域での起業:東京圏以外の道府県・市町村、または東京圏内の条件不利地域において、デジタル技術を活用し、地域課題の解決を目的とした起業等を行うこと。
  • ② 起業の時期:国の交付決定日以降、各自治体が定める補助事業期間までに、個人事業の開業届出または法人等の設立を行うこと。すでに起業済みの場合は対象外となります。
  • ③ 居住要件:起業する都道府県内に居住していること、または補助事業期間の完了日までに居住予定であること。

「デジタル技術」「地域課題の解決」の考え方

①の「デジタル技術を活用して」については、キャッシュレス決済、Webによる予約システム、SNS等による情報発信などを事業に取り入れていれば対象になり得るとされ、ハードルは高くありません。「地域課題の解決を目的とした起業」も、地域活性化、子育て支援、買い物弱者支援など幅広い分野が想定されます(分野は各自治体が実施計画に定めます)。なお、事業承継や第二創業も起業等に含まれますが、新たな事業であることなどの要件がある点には留意が必要です。

4. 実在事例(滋賀県「真心ライド」)

2024年、滋賀県の事業者「真心ライド」が、看護師・救急救命士の専門性と医療機器を備えた車両で、医療的ケアが必要な方の移動を支える事業を立ち上げる際に本制度を活用しました。支援金は車両などの資材準備に充てられています。起業にあたっては、先輩事業者への相談や地域の医療・介護関係者との関わりを通じて、自身が感じていた課題が地域全体の課題でもあることを確認し、商工会議所の創業塾等で事業計画や経営を学びながら事業化を進めた点も特徴です。同事業者のインタビュー記事は、内閣府のポータルサイトに掲載されています。

5. 自治体担当者向けの留意点と情報収集先

都道府県・市町村間の重複支援は不可

市町村と都道府県が同時に起業支援事業を実施する場合、同一の起業案件に対して両方から支援することはできません。市町村が起業支援金を活用する際は、あらかじめ都道府県に対して内容の説明を含めた調整を行うことが求められます。

内閣府ホームページ・ポータルサイト

内閣府の起業支援事業に関するページには、各都道府県・市町村が実施する起業支援金のホームページへのリンクがまとめられています。あわせて、内閣府は「社会課題解決の担い手応援ポータルサイト」を運営しており、オンラインセミナー(年4回)や現地勉強会(年2回)の案内、好事例の記事などを掲載しています。

セミナー動画のご案内

本記事で全体像をご確認いただいた後は、内閣府担当官の言葉で直接制度の留意点や実例のニュアンスに触れていただける、以下のアーカイブ動画(約16分)をぜひご視聴ください。

  • [00:01:49] 地方創生起業支援事業の位置づけと交付金の仕組み
  • [00:03:30] 事業の概要、申請主体の拡充、制度活用上の留意点
  • [00:05:21] 事業主体と対象地域
  • [00:05:49] 対象経費と補助の上限額・補助率
  • [00:07:07] 起業支援金の支給要件と「デジタル技術」「地域課題の解決」の考え方
  • [00:08:59] 【事例】滋賀県「真心ライド」の起業と支援金の活用
  • [00:10:56] 市町村による活用と、都道府県・市町村間の重複支援に関する注意点
  • [00:11:50] 内閣府ホームページと「社会課題解決の担い手応援ポータルサイト」の紹介
  • [00:14:54] 質疑応答:制度の趣旨と参加者へのメッセージ

登壇者情報・開催概要

  • 登壇者:内閣府 地方創生推進室 齋藤 大 氏
  • 登壇者略歴:2026年4月より現職、地方創生起業支援事業を担当。
  • 開催日:2026年8月18日(火)

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