【ネイチャーポジティブ】企業版ふるさと納税と連携可能な「自然共生サイト」支援証明書制度 ~環境省セミナー解説~
内閣府主催「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」の分科会として、株式会社カルティブが企画・運営する『地方創生制度活用シリーズセミナー』。本シリーズは、各省庁で制度を企画・運営する担当者から、制度の詳細な仕組みのみならず「施策に込めた想い」までを直接学べる場として開催しています。

本記事は、環境省 自然環境局が登壇した「ネイチャーポジティブへの貢献を国が証明します!~企業版ふるさと納税とも連携可能な自然共生サイトに係る支援証明書制度~」のアーカイブ動画の内容を網羅的に整理した紹介ページです。まずはテキストを通して制度の全体像や申請要件を把握し、社内・庁内での検討資料としてご活用ください。その上で、担当者の熱意や具体的な事例の詳細なニュアンスにつきましては、ぜひページ下部の動画本編よりご視聴されることをお勧めいたします。
1. 「自然共生サイト」支援証明書制度の背景と「自然共生サイト(OECM)」とは
世界的な目標である「30by30(2030年までに陸と海の30%以上を保全する)」および「ネイチャーポジティブ(生物多様性の損失を食い止め、回復軌道に乗せる)」の達成に向け、環境省が推進しているのが「自然共生サイト」です。
国立公園などの法的な保護地域とは別に、里山や企業の所有林、都市の緑地など「民間の取り組み等によって生物多様性の保全が図られている区域」を国が認定する仕組みであり、国際的な概念である「OECM」に該当します。全国で既に610箇所が認定されており、令和7年(2025年)4月からは「地域生物多様性増進法」に基づく本格的な仕組みへと移行しています。
2. 自然共生サイトに係る「支援証明書制度」の概要とメリット
自社で自然共生サイトに適した土地を所有していない企業であっても、ネイチャーポジティブに貢献できるよう設計されたのが「支援証明書制度」です。自然共生サイトの保全活動を支援(資金的・人的・技術的)した企業等に対し、環境省が公的な証明書を発行します。
企業側のメリット(情報開示とPR)
証明書には、支援内容が最終的に生物多様性の保全にどう結びつくかを示す「ロジックモデル(フロー図)」が記載されます。これにより、TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)に沿った情報開示や投資家向けのアピール、CSR活動の強力なエビデンスとして活用することが可能になります。
自治体・管理者側のメリット
自然共生サイトを管理する自治体やNPO等にとっては、本制度が民間企業からの継続的な支援(資金や人手不足の解消)を呼び込むための強いインセンティブとして機能します。
【支援の実在事例】
千葉市の自然共生サイト「谷当の里」(NPO法人が管理する里山・水田)に対し、株式会社ウェザーニューズが人的支援(社員の保全活動参加)および技術的支援(気象観測センサーの試験設置による水管理)を提供し、支援証明書を取得した事例が紹介されています。
3. 支援証明書の申請条件と留意点
支援証明書の発行には、以下の要件を満たす必要があります。
- 対象となる支援:認定された(または認定を目指す)自然共生サイトへの支援であること。自社が所有・管理するサイトへの活動は対象外です。
- 保全計画との整合性:対象サイトの活動計画やモニタリング計画に沿った、実質の維持・向上に確実につながる支援であることが求められます。
- 見返りの禁止:支援したことに対する明確な対価(インセンティブ)を受けた場合は対象外となります。
- 手数料と有効期限:発行手数料として1申請につき99,000円(税込)が必要です。なお、証明書に有効期限はなく、更新手続きは不要です(内容を変更する場合は新規申請が必要)。
※環境省のホームページ内に「支援マッチングページ」が設置されており、支援を希望するサイトと、支援を検討している企業をつなぐ仕組みが提供されています。
4. 企業版ふるさと納税との連携スキームと留意点
環境省は、本制度における金銭的支援の手段として「企業版ふるさと納税」の活用を推奨しています。
- 企業のメリットの最大化:企業は、支援証明書の取得によるTNFD開示等のメリットに加え、企業版ふるさと納税による「最大約9割の税額軽減」を受けることができ、投資コストを大幅に抑えながら環境保全に貢献できます。
- 自治体のアプローチ:自治体は、自らが管理する自然共生サイトへの直接支援を募るだけでなく、「中間支援的な立場」として、管内のNPO等が管理するサイトへの寄付の受け皿となるプロジェクトを立ち上げることも可能です。
- 連携時の留意点:企業版ふるさと納税の制度上、寄付企業が具体的な使途(どのサイトにいくら使うか)を厳密に指定することはできません。しかし、支援証明書の取得には「サイトの活動に実際にいくら使われたか」の確認が必須となるため、自治体と企業間での丁寧な確認と相互理解が必要となります。
セミナー動画のご案内
本記事で全体像をご確認いただいた後は、環境省担当官の言葉で直接制度の留意点や実例のニュアンスに触れていただける、以下のアーカイブ動画(約25分)をぜひご視聴ください。
- [00:02:46] 30by30目標の背景と「自然共生サイト(OECM)」の概要・現状
- [00:08:38] 自然共生サイトに係る「支援証明書制度」の概要とロジックモデルの解説
- [00:11:02] 実在事例の紹介(千葉市「谷当の里」に対するウェザーニューズ社の支援)
- [00:14:43] 支援証明書の申請条件、留意点、発行手数料(99,000円)について
- [00:19:53] 「企業版ふるさと納税」と連携した金銭的支援のスキームと実務上の留意点
登壇者情報・開催概要
- 登壇者:環境省 自然環境局 自然環境計画課 地域ネイチャーポジティブ推進室 吉田 宗史 氏
- 登壇者略歴:環境省の自然保護官として、これまで全国各地の国立公園等の管理に従事してきました。現在、ネイチャーポジティブの取組を地域で推進していくための施策を担当しています。地域づくりの根幹に豊かな自然環境や生態系の保全が位置付けられるような社会を目指しています。
- 開催日:2026年7月14日