【地域循環共生圏】環境で地域を元気に・強くする 地域経済循環分析・地域指標分析の活用 ~環境省セミナー解説~
内閣府主催「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」の分科会として、株式会社カルティブが企画・運営する『地方創生制度活用シリーズセミナー』。本シリーズは、各省庁で制度を企画・運営する担当者から、制度の詳細な仕組みのみならず「施策に込めた想い」までを直接学べる場として開催しています。

本記事は、環境省 大臣官房 地域政策課 地域循環共生圏推進室が登壇した「環境で地域を元気に・地域を強くする 地域循環共生圏と地域経済循環分析・地域指標分析について」のアーカイブ動画の内容を網羅的に整理した紹介ページです。まずはテキストを通して取り組みの全体像や分析ツールの概要を把握し、社内・庁内での検討資料としてご活用ください。その上で、担当者の熱意や詳細なニュアンスにつきましては、ぜひページ下部の動画本編よりご視聴されることをお勧めいたします。
1. 地域循環共生圏とは(背景と考え方)
気候変動、生物多様性の損失、汚染といった環境危機は深刻化しており、地球の環境収容力はすでに限界に達しているとも言われています。環境は人類存続の基盤であり、その上に社会・経済が成り立っています(SDGsウェディングケーキモデル)。大雨・災害による地域の安全への影響や、温暖化による藻場の減少が漁業資源・地域産業に及ぼす影響のように、環境・社会・経済は密接に結びついています。
環境省では、地域資源を持続的に活用し、環境・社会・経済を統合的に良くする事業・取り組みを「ローカルSDGs事業」と呼び、これを生み出し続けることで自ら課題を解決し続ける「自立した地域」をつくり、地域同士が支え合う自立分散型の持続可能な社会を「地域循環共生圏」として推進しています。自然資本を豊かにしていくことが、その前提となります。
【ローカルSDGs事業の3つの条件】
- 地域資源の持続的な活用(環境の側面):地域にあるものを守り、価値を高めつつ生かす
- 社会課題の解決(社会の側面):地域の環境・社会・経済課題の同時課題を解決する
- 経済循環の強化(経済の側面):事業の持続可能性に加え、地域にお金が落ちる仕組みをつくる
【事業を生み出す2つのポイント】
- 主体性(オーナーシップ):地域の各主体が、ワクワク感とやりがいを大切にしながら自分ごととして地域に関わること
- 協働:地域内外の多様な分野・ネットワーク・支え合いから事業が生まれること
主体性のある様々な分野が協働する場として「地域プラットフォーム」を形成し、ビジョン実現に向けたアイデア出し、地域資源の棚卸し、信頼関係でつながる担い手の発掘を進めていくことが、ローカルSDGs事業の創出につながります。地域づくりのコアメンバー向けに、進め方をまとめた手引き(2024年4月発行)が地域循環共生圏ホームページで公開されています。
2. 地域経済循環を強くするとは
地域循環共生圏づくりの経済側面では、「地域経済循環」を強くすることが重要です。ポイントは次の2段階です。
- 稼ぐ力を強くする:地域資源を活用し、地域の中で所得を稼ぐ
- 所得を地域で循環させる:稼いだ所得を地域外に流出させず、地域内で循環させる
例えば、地域の森林資源を活用した木質バイオマス発電では、得られたエネルギーを地域の施設で利用し、発電事業の利益を地域の福祉や子育て支援に活用することで、地域資源から生まれた価値・お金が地域内で循環します。
3. 環境省が提供する分析ツール
環境省は、地域のお金の流れを可視化する分析ツールを無料で提供しています。国民経済計算や産業連関表などをもとに地域経済循環分析のデータベースを構築しており、アプリで自治体を選択すると分析結果がパワーポイント形式で出力されます。複数自治体を選択すれば近隣自治体との比較分析も可能で、出力データは施策立案や議会説明の根拠資料として活用できます。
| ツール | 見える時間軸 | 主な機能 |
|---|---|---|
| 地域経済循環分析ツール | 地域経済の「今」 | 対象地域のお金の輸出入、産業間の取引関係、地域経済の強み・弱み・課題を出力 |
| 経年変化版 循環分析ツール | 地域経済の「これまで」 | 複数年度における経済循環構造の経年変化を比較分析 |
| 経済波及効果分析ツール | 地域経済の「これから」 | 施策メニューを選び、施策がもたらす波及効果を市町村ごとにシミュレーション |
| 地域指標分析ツール | 環境・社会・経済の客観データ | 全国一律に取れる指標を網羅的に整備し、同規模自治体・全国平均・県内と比較 |
- 地域経済循環分析ツール:出力の最初のページに、生産・分配・支出の3領域に分けた経済循環構造の概略図が表示されます。所得の稼ぎと流出の規模、エネルギー代金による所得流出、強みのある業種、最も付加価値額を稼いでいる産業、企業・産業同士のつながり(産業クラスター)の状況が分かり、総合計画やマスタープランの検討に活用できます。
- 経年変化版 循環分析ツール:地域経済循環分析ツールが単年度の分析にとどまるのに対し、複数年度の経済循環構造の変化を追える点が強みです。
- 経済波及効果分析ツール:太陽光発電、空き家対策、観光振興など、環境施策・地域施策の各メニューから検討中の施策に近いものを選択し、波及効果をシミュレーションします。例えば太陽光発電の導入と観光振興を比較することで、同規模の波及効果を得るための導入負担や地域への負担の違いを把握でき、地域のポテンシャルに合った施策の検討に役立ちます。
- 地域指標分析ツール:環境・社会・経済に加え、福祉、交通、教育などの地域のストックからどのような成果が生み出されるかを比較できます。「地域の偏差値」も表示されます。
【ダウンロード方法】<br> 地域循環共生圏ホームページのトップにある「学ぶ」タブから「地域経済循環分析」のバナーを選択し、該当ページからダウンロードできます。
4. 研修・表彰・イベントのご案内
地域経済データ活用研修(自治体向け)
- 日程:9月30日〜10月2日の3日間
- 会場:埼玉県所沢市内の環境調査研究所(要確認:正式名称)
- 内容:地域循環共生圏の考え方の講義、現場視察、地域経済循環分析・波及効果分析・地域指標分析を一体的に学ぶプログラム
- 締切:8月31日(所属長へ相談の上、申し込み)
グッドライフアワード
環境と社会に良い暮らしに関わる活動・取り組みを表彰する事業で、取り組み主体を問わず、国内で活動する民間団体・自治体・個人が対象です。今年で14回目を迎え、過去13年間で約450の取り組みを表彰。環境大臣賞のほか、実行委員の専門領域に基づく特別賞もあります。
- 応募締切:9月13日
- 表彰式:12月5日(受賞者が集まる場として、新たなコミュニティ創出にもつながる)
- 今年からホームページに過去の受賞団体の検索機能が実装され、活動分野・受賞年度のほか、日本地図からも検索可能
地域循環共生圏セミナー・フォーラム
- 地域循環共生圏セミナー:9月7日・9月17日の全2回、オンライン開催。「食」と「暮らし」の2つの視点から地域づくりを実践する講師を招き、講義後に意見交換の時間も設けられます
- 地域循環共生圏フォーラム:12月開催予定。実施主体が一堂に会し、協働が生まれる場として設計
5. 活用にあたってのポイントと情報収集先
地域課題が山積する現在の社会情勢では、専門領域1つの入り口から予算を組んで政策を打つだけでは解決が難しくなっています。自治体においては、様々な部署・部門や地域内外の関係者との横連携を深め、多様な分野の切り口から1つの課題を解決していくことが求められます。
施策や地域づくりの事例は、地域循環共生圏ホームページ、メールマガジン、Facebook、noteなどで発信されています。
セミナー動画のご案内
本記事で全体像をご確認いただいた後は、環境省担当官の言葉で直接制度の目的や活用のニュアンスに触れていただける、以下のアーカイブ動画(約24分)をぜひご視聴ください。
- [00:02:46] 環境・社会・経済のつながりとローカルSDGs事業の考え方
- [00:07:11] 地域循環共生圏とは・手引きのご案内
- [00:09:24] 地域経済循環を強くするとは
- [00:10:41] 環境省が提供する分析ツール(地域経済循環分析・経年変化版・経済波及効果分析)
- [00:15:49] 地域指標分析ツールとダウンロード方法
- [00:17:31] 地域経済データ活用研修・グッドライフアワード・セミナー/フォーラムのご案内
登壇者情報・開催概要
- 登壇者:環境省 大臣官房 地域政策課 地域循環共生圏推進室 上野 幸洋 氏
- 登壇者略歴:2020年喜多方市役所に入庁し、防災行政を経て、廃棄物や公害、環境衛生等の環境行政を担当。その後、2025年より環境省へ出向し、現在は地域循環共生圏という地域資源を活用した持続可能な地域づくりの推進に従事している。
- 開催日:2026年8月25日(火)