【震災支援セミナー】企業だからこそできる震災支援 ~企業版ふるさと納税の活用~「内閣府・熊本県八代市登壇」

内閣府主催「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」の分科会として、株式会社カルティブが企画・運営する『地方創生制度活用シリーズセミナー』。本シリーズは、各省庁で制度を企画・運営する担当者から、制度の詳細な仕組みのみならず「施策に込めた想い」までを直接学べる場として開催しています。

本記事は、内閣府地方創生推進事務局および八代市ふるさと納税推進室が登壇した緊急開催セミナー「企業だからこそできる震災支援 ~企業版ふるさと納税の活用~」のアーカイブ動画の内容を網羅的に整理した紹介ページです。まずはテキストを通して制度の全体像や被災地の状況を把握し、社内・庁内での検討資料としてご活用ください。その上で、担当者の熱意や現地の状況の詳細なニュアンスにつきましては、ぜひページ下部の動画本編よりご視聴されることをお勧めいたします。

1. 本セミナーの趣旨

令和8年熊本地震の発生から約1ヶ月という時点で、緊急開催されたセミナーです。企業が被災地のためにできることは数多くありますが、本回は企業版ふるさと納税にクローズアップし、どのような支援が可能か、今後どのように支援を続けていく必要があるかを、制度所管の内閣府、被災自治体である八代市、企画運営のカルティブの三者から解説しています。

2. 企業版ふるさと納税の制度概要(内閣府)

制度の目的と対象事業

企業版ふるさと納税は、平成28年度に創設された制度です。地方創生の充実・強化に向けて、民間の力を活用して地方への資金の流れを生み出すことを目的としています。

対象となるのは、地方公共団体が策定する「地域再生計画」に位置づけられた地方創生関係の事業です。自治体がこの計画に基づいて取り組む事業に企業が寄付した場合、法人関係税の軽減効果が受けられます。

税制上の軽減効果

区分内容
損金算入約3割(通常の寄付と同様)
税額控除最大6割(法人住民税・法人事業税・法人税)
合計の軽減効果最大約9割

令和6年度実績では6000~8000社余りの企業から寄付があり、企業側からは「社会貢献を通じたイメージアップにつながる」「関連分野への寄付がその分野とのつながりを生む」といったメリットの声が寄せられています。

制度上の2つの制約

  1. 本社が所在する地方公共団体への寄付は対象外。本社所在地以外の自治体を応援する制度です。
  2. 寄付の代償として経済的な利益の見返りを受けることは禁止

人材派遣型・副業型のスキーム

資金の寄付に加えて、企業から地方公共団体へ人材を派遣する人材派遣型の仕組みがあります。派遣された人材は自治体の職員として任用され、企業がその人件費を含む事業費を企業版ふるさと納税で寄付することで、寄付分について最大9割の税額控除を受けられます。自治体側は人件費の負担を実質なくして人材を受け入れられ、企業側は自社のノウハウや人材を直接地域貢献に活かせるほか、人材育成の機会にもなります。

常勤・フルタイムで自治体に採用されるパターンに加え、昨年度からは副業型(二地域居住や、親元の会社に勤務しながら自治体に週1~2回勤務する働き方)も可能と整理されています。利益供与に当たらないようにする留意点があるため、活用時には確認が必要です。

被災自治体向けの臨時認定

地域再生計画の認定・変更は通常年3回の機会で受け付けていますが、震度6弱以上の地震が発生した場合などで被災自治体にニーズがあるときは、臨時で認定・変更を受け付ける対応をしています。直近では、想定より必要な事業が増えた、寄付の受け入れが見込まれるといった理由で、この臨時認定の仕組みを活用する自治体の事例が出ています。

3. 災害復旧・復興・防災での活用事例(内閣府)

広島県呉市では、平成30年7月豪雨災害を受け、災害に強い街づくりと魅力ある交流都市づくりを目指す事業に企業版ふるさと納税を活用しました。被災者への借上げ住宅の提供と助成金、観光施設の改修、復興イベントの開催などを実施しており、企業が被災地の復旧・復興に貢献したモデルケースと位置づけられています。

熊本県では、平成28年熊本地震からの復興に向けて「熊本地震震災ミュージアム」を整備しました。防災の重要性を発信して記憶の風化防止と防災意識の向上を図るとともに、交流人口の拡大と地域活性化に貢献する事業として実施されています。

福島県では、震災遺構施設の整備に活用しています。展示内容の充実や案内の配置、交流広場の整備により、被災の実情をリアリティを持って理解できる施設づくりを進めた事例です。

大塚商会(要確認)と愛媛県の12市町村は連携協定を結び、災害発生時に防災資機材を「物納」で寄付し、連携して活用する仕組みを構築しています。この協定の中で企業版ふるさと納税の制度が活用されており、防災分野での事例として紹介されました。

4. 八代市の被害状況と支援の必要性(八代市)

地震の概要

7月28日16時27分、熊本県熊本地方を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生しました。最大震度は7で、八代市では震度6強を観測。長年八代の産業を支えてきた日本製紙八代工場の煙突が崩壊するなど、市民に大きな衝撃を与えました。その後も揺れは断続的に続き、確認された地震は360回余り、最大避難者数は4,095人に達しています。

被害が特に大きかったのは鏡町や船長町(要確認)といった地域です。日本のいぐさの9割を生産する八代市の中でも主要な産業地帯で、古い民家が多いことから住宅の倒壊・損壊が相次ぎました。

主な被害(9月3日午後3時時点)

項目内容
死者20名
建物・施設等の被害総額約1,211億円(把握できている範囲)
商工業1,252事業者に被害、被害額 約229.3億円(要確認)
農林水産関係農業用水路など 441.6億円
文化財427.6億円(把握できている範囲)
避難生活者9月1日時点で1018人

文化財では、旧熊本藩の八代城主 松井直之が建てた国指定文化財「松浜軒」が大きく倒壊し、修復に50億円以上が必要と見込まれています。

断水・井戸水の問題

地震直後、上水道を利用する55万661人(要確認)が断水状態となりました。上水道の復旧は進んでいますが、八代市は地下水が豊富で、井戸水を生活用水にしている世帯が多くあります。地震で地盤や水脈がずれた影響で井戸水が出なくなり、現在も4,400世帯で水が使えない状況が続いています。市は井戸水対応チームを立ち上げていますが、市内の掘削業者は3者のみで、申し込んでも2年待ちになる見込みです。給水車による支援が今後も長期にわたり必要とされます。

質疑応答でも「市民が今いちばん困っているのは水」と述べられ、井戸水利用世帯は市全体の1割弱に相当するとのことでした。

避難生活とインフラ

夏休みの終わりに伴い、避難所から帰宅する人が増えましたが、それでも現在も16箇所の避難所で1,018人が生活を続けています。陥没・隆起した道路や崩落した橋は応急的に通行可能になっていますが、災害前と同じように安全に使える状態に戻すには5年以上かかる見込みです。

寄付の使い道

企業版ふるさと納税による寄付は、八代市の災害復旧・復興事業に活用されます。

  1. 市民生活の再建:避難生活の環境改善、避難者が日常生活を取り戻すための補助金など
  2. インフラの復旧:水道・道路・橋などの復旧・復興
  3. 地域全体の再生:鉄道を含む交通機関、商工業、農林水産業、文化財など、地域を支えるあらゆる分野の再建

支援ニーズの変化

発災直後は救命・避難・応急給水が最優先で、その後は全国から市の物流を埋め尽くすほどの物資が寄せられました。時間の経過とともに市内で物資を調達できるようになったため、8月20日で支援物資の受け入れを停止し、8月21日からは被災者が1箇所で相談できるワンストップセンターを開始しています。現在は、インフラの再建や市民への補助金の財源となる金銭による寄付が最も重要な支援になっています。

寄付の状況と企業へのお願い

9月3日時点で124社から1億8,000万円以上の寄付が寄せられています。一方で把握できている被害総額は1,200億円以上あり、まだスタート地点に立った段階であるため、継続的な支援の検討が呼びかけられました。寄付企業は八代市ホームページに掲載されるほか、金額に応じて市長からの感謝状贈呈式などが行われます。支援の申し込みは資料内のQRコードから可能で、不明点は宮村氏に相談できます。

5. 企業の関わり方と支援できる領域(カルティブ)

発災直後と復旧・復興期を分けて考える

発災直後のフェーズと、その後の復旧・復興のフェーズは分けて検討することが勧められました。復旧・復興期にはインフラ整備や街づくりのやり直しが続きます。企業版ふるさと納税の良い点は、何年も続く復興に企業が関わりを作るきっかけになることです。落ち着いた時期には人材派遣型を活用し、街づくりや産業支援を得意とする企業が、復興の新しい産業づくりに伴走することも考えられます。今必要なのは現物の物資ではなく、その後も街で生活していく人たちのための資金である、という点が強調されました。

企業が持つ3つのリソース

企業だからこそできる支援として、スピードの重要性とともに、企業が持つ3つのリソースが挙げられました。

  • お金
  • 物・技術
  • 専門人材

企業版ふるさと納税はあくまで「支援の入り口」であり、その次の一歩を見据えて行動することが呼びかけられました。被災した自治体は八代市以外にもあるため、自社の得意分野を被災地域の課題に重ね、「自治体が何を必要としているか」と「企業が何を支援したいか」の接点を探して関係を作ることが大切です。

企業版ふるさと納税で支援できる復旧・復興の課題領域

  • 公共施設・生活基盤:被災エリアの公共施設などの復旧・復興
  • 産業・観光:観光支援に加え、イ草生産の9割を担う八代市の産業が大きな被害を受けたことで、日本の畳文化が廃れかねないという観点からの産業支援
  • 防災・減災:今後の防災に対する支援
  • 地域コミュニティ・街づくり:地域コミュニティの再編成、商店街を含む街づくり
  • 中長期的な被災者支援:心身の問題も含めた被災者への伴走

6. 制度利用の注意点(カルティブ)

  1. 義援金とは性格が異なる:企業版ふるさと納税は、自治体が地方創生事業や地域のインフラ整備など、地域の活性化のために使う寄付です。義援金のように被災者に配分されるお金ではありません。
  2. 全ての災害支援が対象になるわけではない:制度の要件を満たす必要があり、自治体側で地域再生計画の調整が必要です。
  3. 本社所在地の自治体への寄付は税制優遇の対象外:例えば八代市に本社がある企業が八代市や熊本県に寄付しても、企業版ふるさと納税としての優遇は受けられません。
  4. 経済的な利益の供与は禁止:個人版ふるさと納税のような返礼品は受けられません。ただし自治体ホームページへの企業名掲載や感謝状の贈呈は可能で、対外的なアピールに活用できます。

セミナー動画のご案内

本記事で全体像をご確認いただいた後は、内閣府担当官と八代市担当者の言葉で直接、制度の留意点や現地の状況のニュアンスに触れていただける、以下のアーカイブ動画(約39分)をぜひご視聴ください。

  • [00:00:07] 開会・本セミナーの趣旨とアジェンダ
  • [00:03:03] 【内閣府】企業版ふるさと納税の目的と税制上の仕組み
  • [00:06:23] 【内閣府】人材派遣型・副業型のスキーム
  • [00:08:50] 【内閣府】被災自治体向けの地域再生計画の臨時認定
  • [00:09:35] 【内閣府】災害復旧・復興・防災での活用事例
  • [00:14:45] 【八代市】令和8年熊本地震の概要と被害状況
  • [00:18:56] 【八代市】断水・井戸水・避難生活・インフラの現状
  • [00:20:51] 【八代市】寄付の使い道・支援ニーズの変化・企業へのお願い
  • [00:25:21] 【カルティブ】復旧・復興フェーズでの企業の関わり方と3つのリソース
  • [00:29:21] 【カルティブ】企業版ふるさと納税で支援できる復旧・復興の課題領域
  • [00:32:18] 【カルティブ】制度利用の注意点
  • [00:35:20] 質疑応答・閉会

登壇者情報・開催概要

  • 登壇者:内閣府 地方創生推進事務局 参事官補佐 橋尾 参事
  • 登壇者:八代市 ふるさと納税推進室 宮村 主事
  • 司会:株式会社カルティブ 本吉 史幸 氏
  • 開催日:2026年9月4日

※本記事は登壇時点の制度内容および被害状況に基づくものです。制度は改正される可能性があり、被害状況や支援の受付状況も日々変化します。最新の要件は内閣府地方創生推進事務局および八代市のホームページでご確認ください。

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