企業版ふるさと納税の返礼品|禁止事項と企業名公表
企業版ふるさと納税では、寄付の代償となる返礼品や経済的利益の提供は禁止されています。一方、自治体による企業名の紹介や、公正な手続きによる契約は可能です。寄付の見返りに当たるか、手続きが公正か、必要な報告・公表を行うかを分けて確認します。

このページでわかること
- 返礼品などの経済的利益が禁止される理由と、企業名紹介との違い
- 寄付企業との契約や、寄付法人名の公表について確認すること
- 企業・自治体が募集や申出の前に使える判断表と確認手順
企業版ふるさと納税に返礼品はある?
企業版ふるさと納税では、寄付の代償として返礼品を提供することはできません。企業による地域の地方創生事業への支援を、税制面で後押しする仕組みであり、自治体が企業へ経済的な見返りを提供することは禁止されています。
個人版と同じように「寄付額に応じて特産品を選ぶ」といった利用方法にはなりません。法人関係税の軽減と、自治体から受け取る商品・サービスを混同せず、支援対象の事業そのものを見てを検討します。
禁止されるのは、品物の受け渡しだけではありません。寄付の見返りとして契約上の優遇などを約束すれば、金品を渡していなくても経済的利益の問題になります。制度の基本と税負担軽減に寄付ついては、企業版ふるさと納税とはをご覧ください。
企業名の紹介と、経済的な見返りを区別する
自治体のホームページや広報誌などで、寄付企業名を紹介することは可能です。内閣府の資料では、こうした紹介に加え、施設の銘板などで企業名を示す例も案内されています。
ただし、「企業名を紹介できる」という説明から、どのような広告・販売促進サービスでも寄付と交換できるとはいえません。掲載内容や方法を確認し、寄付への謝意や取り組みの紹介として説明できる形に整えます。
例えば、企業の寄付の事実と支援事業をホームページに掲載することと、「寄付をすれば自治体が商品の購入を保証する」と説明することでは、企業に約束する内容が異なります。企業側も、掲載の有無、掲載媒体、確認手順を把握したうえで検討してください。
企業名が掲載されても、閲覧数、検索順位、報道掲載、売上などの成果は保証されません。社内で寄付の効果を説明する際は、寄付による地域貢献と、発信を通じて期待する効果を分けて記載することが大切です。
募集や申出の前に使う判断表
次の表は、内閣府が示す「経済的な見返りの禁止」「企業名の紹介」「公正なプロセスによる契約」を、事前確認に使いやすく整理したものです。個別案件の適法性を確定するチェック表ではありません。
| 検討している対応 | 基本的な整理 | 事前に確認すること |
|---|---|---|
| 寄付額に応じて特産品などを返礼品として渡す | 寄付の代償となる経済的利益の提供は不可 | 募集資料に返礼品の選択や提供の約束が含まれていないか |
| 自治体ホームページや広報誌で寄付企業名を紹介する | 実施可能な紹介方法として案内されている | 企業名、寄付の事実、支援事業などの掲載内容と事前確認の方法 |
| 施設の銘板などで寄付企業名を紹介する | 内閣府資料に紹介例がある | 表示内容、設置場所・期間、自治体内の手続き |
| 寄付企業が自治体の事業を受託する | 公正なプロセスを経た契約は可能 | 寄付と発注条件の関係、選定過程、報告・公表の必要性 |
| 寄付を条件に仕事を発注すると約束する | 寄付の見返りとしての優遇は不可 | 募集担当・事業担当・契約担当の説明が一致しているか |
| 企業が寄付や支援事業を自社サイトで発信する | 自社の取り組みとして、確認できた事実を説明する | 自治体との公表時期の調整、名称や写真の使用、実績と予定の区別 |
出典:内閣府「『寄附を行うことの代償として経済的な利益を供与すること』についての解説」
※右欄の確認事項は、行き違いを減らすためのriverによる実務上の提案です。
感謝状の贈呈や贈呈式などを予定する場合も、自治体ごとの実施内容を確認します。「実施する予定」と「必ず受けられるサービス」が混ざった説明にならないよう、何を行うのかを具体的に共有しておくと安心です。
寄付企業は自治体の仕事を受託できる?
寄付企業であることだけを理由に、自治体との契約が一律に禁止されるわけではありません。内閣府は、公正なプロセスを経た契約は問題ないと説明しています。寄付を契約の条件や優遇の理由にしないことが前提です。
ここで確認したいのは、寄付と取引の意思決定を、それぞれ説明できるかどうかです。次の2つは、検討のための架空例です。
- 寄付企業も公募に参加する例:企業が教育事業へ寄付し、その後、自治体が実施する公募に参加する。寄付の有無による優遇を設けず、選定手続きや評価過程を確認する。
- 寄付と受注を交換条件にする例:「100万円を寄付するなら、関連業務を発注する」とあらかじめ約束する。寄付の代償としての利益を約束する説明であり、採用できない。
最初の例も、公募を実施すればすべての確認が終わるわけではありません。実際の募集条件、参加状況、契約内容、関係会社や再委託先との関係などを確認する必要があります。
企業名の紹介と、透明性確保のための公表は別に確認する
広報として企業名を紹介することと、制度上必要となる実施報告・情報公表は、目的と手続きが異なります。
令和7年度税制改正に伴う制度改善策では、寄付法人や関係会社が競争入札で一者応札により受託する場合など、一定の場合に国への実施報告と寄付法人名の公表を求めています。また、寄付を活用する事業の発注先について、競争入札・随意契約の一定の範囲を自治体が公表する仕組みが示されています。少額の場合などの除外があるため、すべての契約を同じ扱いにはできません。
同資料では、上記の法人名公表の対象となる場合に寄付法人が非公表を希望するときは、自治体が第三者を含む審議会等で理由を確認し、国に報告する手続きを示しています。国はその理由を公表するとされており、企業が希望を伝えるだけで、必ず非公表になるという扱いではありません。
寄付を検討する企業には、広報掲載の希望を確認するとともに、制度上必要な公表が生じる場合があることも説明します。申出書の公表希望欄だけを見て、あらゆる公表を判断しないことがポイントです。
判断に迷う場合の確認手順
「この対応は可能ですか」と質問する際は、寄付額や企業名だけでなく、企業に何を提供・約束するのかを整理すると確認が進めやすくなります。
- 予定する対応を具体化する:掲載、贈呈、施設利用、契約など、誰が誰に何を行うかを記載します。
- 寄付との関係を確認する:寄付の有無や金額によって、取引や利用条件がどのように変わるかを整理します。
- 自治体内で判断をそろえる:制度担当だけでなく、内容に応じて事業・契約・広報などの担当に確認します。
- 必要な報告と公表を整理する:公表項目、確認先、実施時期を記録し、判断が難しい論点は自治体から制度所管へ確認します。
- 募集資料や社内説明へ反映する:確認済みの内容と未確定の内容を区別し、企業に約束する表現を統一します。
寄付募集では、企業が得られる見返りを増やすことに注力するより、事業の必要性、寄付の使途、実現したい成果を具体的に示すことが有効です。寄付募集プロジェクトと募集ページの作り方を参考に、企業が支援を判断できる情報を整えます。
よくある質問
返礼品がなくても、企業名を紹介してもらえますか?
はい。自治体ホームページや広報誌などでの寄付企業名の紹介は可能です。実施媒体や掲載内容は自治体によって異なるため、寄付前に確認してください。
感謝状や贈呈式は、すべての自治体で実施されますか?
一律に実施されるものではありません。自治体ごとの方針や日程、内容を確認してください。寄付の条件として、未確定の実施内容を約束しないことも大切です。
寄付企業が入札に参加すること自体が禁止されていますか?
いいえ。寄付企業であることだけを理由とした一律の契約禁止ではありません。公正なプロセスを確保し、寄付を理由とした優遇を行わず、必要な報告・公表にも対応します。
企業が非公表を希望すれば、名前は必ず公表されませんか?
必ず非公表になるとは限りません。通常の広報掲載の希望とは別に、制度上、一定の場合に必要となる報告・公表があります。該当する場合の非公表には所定の確認手続きがあるため、申出前に自治体へ確認してください。
募集資料・発信内容の整備をriverに相談する
寄付募集ページや企業向け資料を整えたい場合は、原稿が未作成でもご相談いただけます。掲載・紹介・契約などについて予定している対応を、分かる範囲でお知らせください。企業の方は、寄付の目的や社内外への発信について、検討していることをお知らせください。
支援の概要はriverサービスについてで確認できます。制度上の個別判断は、寄付先自治体を通じて確認します。