いのち救う未来へ。三田市が挑む「NICU」整備プロジェクト

【画像】新生児を抱く母親と見守る医療スタッフ
豊かな自然に恵まれた兵庫県三田市は都市部へのアクセスも良い魅力的な街です。しかし現在、多くの地方と同様に「医師確保」や「病院の老朽化」という課題に直面しています。この危機を乗り越え、安心して暮らせる環境を未来へつなぐため、市は三田市民病院と隣接する神戸市の済生会兵庫県病院との再編統合による新病院の整備し、新病院へ「新生児集中治療室(NICU)」を設置する「to go ~いのち救う未来へ~」プロジェクトを始動させました。企業版ふるさと納税を活用したこのプロジェクトについて、三田市医療政策部医療政策課係長の武田智さんにお話を伺いました。
医師不足や老朽化という課題から、病院の再編統合へ
現在、地方では産婦人科医の確保が難しく、ハイリスク出産や緊急時に対応できる体制を整えることが困難になっています。三田市も例外ではなく、現状、ハイリスク出産などでは設備が充実した済生会兵庫県病院(神戸市北区)を利用するケースが多くなっていますが、通院のための移動は妊婦や家族にとって大きな負担となっています。さらに三田市民病院の建物老朽化も重なり、他病院との再編統合という選択を迫られていました。
「医師不足は避けて通れない厳しい現実です。24時間体制の病院を維持するには経費負担が大きい一方、分娩数の減少で若手医師が経験を積む機会が失われている構造的課題がありました。そこで、周産期医療に強みをもつ済生会兵庫県病院との再編統合により、地域全体の出産を安定して支える新病院を整備することでまとまったのです」と、経緯を語る武田さん。

【画像】都市機能と田舎の景色が共存する三田市の風景
この地域で確実にいのちを受け止めるために、NICUを整備
2030年度に開院予定の新病院は35の診療科を擁し「すべてのいのちに寄り添い、地域に笑顔と安心を届けます」「地域とともに高度な医療を提供できる病院づくりを推進します」という基本方針を掲げています。その新病院に設置される設備が、本プロジェクトの核である「新生児集中治療室(NICU)」です。これにより、ハイリスクな妊婦や低出生体重児に対し、高度な医療を24時間365日体制で提供することが可能になります。
武田さんは新病院のもつ強みをこう説明します。
「ただ設備を整えるだけでは不充分です。合併症に対応するためには、妊婦さんの全身管理ができる多様な診療科の専門医が揃っていることが不可欠。診療科数が大幅に増える新病院だからこそ、NICUが真の力を発揮します。山を越えて神戸市の市街地まで搬送しなければ救えなかったいのちを、この地域で確実に受け止め、地域完結型の高度な周産期医療を確立したいと考えています」

【画像】桜並木の下を元気に駆ける子どもたち
「医療」から広がる雇用と定住、そして市民の誇り
新病院の整備は、単なる医療の提供にとどまりません。約10万の人口を抱える三田市にとって、新病院は地域のシンボルであり、雇用創出や若年世帯の移住・定住を促す効果も期待されています。さらに市は、子どもたちが医療従事者に憧れをもち、将来的に地元で活躍する好循環をつくり出す「医療人材育成事業」も同時に進めています。
「巨額の予算をかけてつくる病院ですから、医療を提供するだけではもったいないと考えています。ここを雇用の場とし、現役世代や子どもたちが『この街にはあの病院があるから安心だし、いつかあそこで働きたい』と思える場所にしたいのです。子どもたちが医師や看護師とふれあうイベントなども通じて、市民が誇りに思える病院に育て、親子の移住や定住を後押ししたいですね」と、武田さんは新病院整備にとどまらず、さらに先の未来を見つめています。

【画像】三田市の医療担当職員がGCF(ガバメントクラウドファンディング)への寄付をお願いしている様子
日本全国の地方都市が直面する問題に、三田から成功事例を
本プロジェクトを進めるため、市は企業版ふるさと納税による寄付を募っています。目標額は10億円と非常に大きな挑戦ですが、求めているものは単なる資金調達ではありません。直面している医療課題を「自分ごと」として共有し、ともに課題解決に挑むパートナーを増やすことに本当の目的があります。
武田さんは寄付企業への想いを熱く語ります。「私たちの直面している医師不足や出産環境の悪化は、三田市だけの問題ではなく、日本全国の地方都市が必ず経験する構造的な課題です。だからこそ企業の皆様へアプローチする際も『地方における医療体制の持続可能性という日本全体の大きな共通課題に対して、ともに成功事例をつくり、次の時代へバトンをつなぐためにお力を貸してくださいませんか』とお声がけしています」

【画像】三田市医療政策部医療政策課係長の武田智さん
つながった縁を切らない、継続的な関係性の構築
市では、寄付を通じてつながった企業を単発の支援者で終わらせず、その後も毎年お礼を伝えに足を運ぶなど、継続的な関係づくりをなによりも大切にしています。
今後の展望について、武田さんは最後にこう結びました。
「最初は偶然のきっかけから三田市に興味をもっていただくこともありますが、私たちの熱意や実際の取り組みにふれていただくなかで、つながった縁を切らずに毎年対話を重ねる関係でありたいと考えています。2030年度の開院までは長い道のりですが、企業の皆様とともにこの大きなプロジェクトを達成し、いつか『あの新病院のNICUは、私たちが一緒につくったんだ』と誇りをもって語り合える日を心から楽しみにしています」
語り手

三田市医療政策部医療政策課係長
武田智さん
| 自治体 | 兵庫県三田市 |
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