日本の縮図・佐渡市。一丸となって未来を拓く「人財総動員プロジェクト」

【画像】山間に広がる「岩首昇竜棚田」と朝日
新潟県佐渡市は、深刻な人口減少と少子高齢化に直面する「日本の縮図」ともいわれる離島です。同市では、将来の地域経済や市民生活を維持するため、若者の島内定着やUIターン、多様な働き手の確保を目指す「持続可能な島づくり~未来を築く人財総動員プロジェクト~」を展開しています。資金調達にとどまらず、企業との長期的なパートナーシップの構築を目指すこのプロジェクトについて、佐渡市役所企画部総合政策課ふるさと創生推進係主事の石黒美弥子さんと、地域振興部地域産業振興課産業振興係主事の金子菜月さんにお話を伺いました。
人口減少と若者の流出。「働く場所がない」というイメージを変える
2004年の約7万人だった佐渡市の人口は2026年時点で約4万6,000人まで減少しており、高齢化率は4割を超えています。高校卒業後に多くの若者が進学などで島外へ転出するなか、帰島を阻む大きな要因が「佐渡市には働く場所がない」というイメージでした。これは若者だけでなく、親世代も「島内には働く場所がないから、将来就職するときは島外に出なよ」と子どもに勧めてしまい、地域全体で諦めや誤解が伝播する悪循環が生じていたのです。しかし実際には若手や中堅層を求める魅力的な市内企業が多数存在しており、そうした情報が若い世代や親世代に充分届いていないことが、課題の一つだと考えられます。
金子さんはこう語ります。
「都会の便利な生活や魅力に惹かれる気持ちは理解できます。それでも佐渡市を選んでもらうためには、地元企業や職場の魅力が伝わるような情報発信を強化することが必要だと考えています。進学などで島を離れた学生へのアンケートでも『働く場所がない』という声が見られますが、若い世代はもちろん親御さんにも市内にどんな仕事や働き方があるのかを正しく知ってもらう機会づくりが急務です」

【画像】さどUIターン・地元就職応援サイト「COMPASS(コンパス)」
佐渡市とのつながりを保ち、島の仕事の魅力を発信
こうした認識のズレを解消し、若者と佐渡市とのつながりを育むため、市では4つの事業を推進しています。佐渡市で働く人が仕事の内容ややりがい、島で働く魅力などを発信する投票企画「島の推しごとグランプリ」、島外進学した学生に地元産品を届けてつながりを保つ「学生応援ギフト」、約60社が登録する地元就職応援サイト「COMPASS(コンパス)」、そして短時間就労をマッチングして柔軟な働き方や多様な人材活用を促進する「さどマッチボックス」です。
「島の推しごとグランプリでは、中高生がエントリー者にインタビューして仕事の魅力を深堀りする機会も設けています。また、さどマッチボックスは3,000人以上が利用しており、観光・宿泊業などの人手不足解消に大きく貢献。主婦層や介護中の方など地域の潜在的な労働力を掘り起こす効果的なサービスになっています」と、金子さんは取り組みの手応えについて説明します。
「実は私の身内もさどマッチボックスを使っていて、スキマ時間を有効活用できると喜んでいました。佐渡市のLINEなどを通じた周知も浸透しており、働き手と事業者の双方に非常に好評です」と、石黒さん。

【画像】ふるさとつながるプロジェクト事業「学生応援ギフト」の一例
地域全体で子どもたちの郷土愛醸成とキャリア形成をサポート
佐渡市では、島を離れる前の小学生から高校生に対する教育にも注力しています。国の伝統的工芸品に指定された「無名異焼(むみょういやき)」について小学生が調べてYouTubeで発信したり、「対話の場の創出事業」内で高校生と地元の事業者が対話する機会を設けたりと、子どもたちが身近な大人と交流し、地域の仕事や伝統にふれる機会を創出。ほかにも稲刈り体験など多彩な教育プログラムを実施しています。
教育の狙いについて、石黒さんはこう語ります。
「早期から自分たちの住む佐渡市の魅力や伝統を知り、郷土愛を育んでもらうことで、将来的に佐渡市で働く具体的なイメージをもってもらえるよう取り組んでいます。行政だけで行うのではなく、学校や地域、市内企業が一丸となって子どもたちのキャリア形成を応援する体制を整えています」

【画像】金子菜月さん(写真左)と石黒美弥子さん(写真右)
「もらって終わり」にしない。企業との継続的パートナーシップ
こうした人財プロジェクトの推進に向け、佐渡市は企業版ふるさと納税を活用したパートナーシップの拡大を図っています。寄付金の受領にとどまらず、観光や農林水産、再生可能エネルギー、医療といった幅広い分野で、企業の知見を活かした共同プロモーションや課題解決などの連携を歓迎しています。
「資金のご支援はもちろんありがたいのですが、企業の皆様がもつ専門的な知識やノウハウをご教示いただくだけでも職員にとって大きな学びとなりますので、まずは気軽にお声がけいただきたいです。特定の枠組みにとらわれず、佐渡市の課題解決に向けて企業の皆様と長期的な信頼関係を築き、持続可能なパートナーシップへ発展させていきたいと考えています」と、石黒さんは呼びかけます。

【画像】佐和田海水浴場にある「あめやの桟橋」
日本の縮図・佐渡市からつくる、持続可能な未来へのメッセージ
佐渡市はSDGs未来都市として、環境保全と経済活動の両立を目指しています。人口減少や人手不足という課題は日本全国が直面する未来の姿であり、離島である佐渡市での取り組みは、全国の地域課題解決につながる先進モデルとなる可能性があります。
「人手不足の解消と人財の定着は、持続可能な島づくりの最優先課題です。この課題に地域全体で前向きに挑み、成果を出していきたいです」と、佐渡の未来について熱く語る金子さん。
最後に、石黒さんは全国の企業へ向けて強いメッセージを送ります。
「佐渡市は日本の縮図であり、課題解決の最前線ともいえます。そして離島だからこそ、実証実験のフィールドとしても適した環境が整っていると考えています。私たちの取り組みに共感していただける企業の皆様とともに、持続可能な未来をつくっていけることを心から願っています」
持続可能な島づくり~未来を築く人財総動員プロジェクト~
語り手

佐渡市役所
石黒美弥子さん、金子菜月さん
| 自治体 | 新潟県佐渡市 |
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