事業承継等人材マッチング支援事業とは?総務省が解説する特別交付税の対象経費・事例

公開日:2026/10/28 / 執筆:river編集部(株式会社カルティブ)

「事業承継人材マッチング支援事業」は、後継者不足・人手不足に悩む地域企業と、女性・若者・シニア・外国人・副業人材などの多様な人材とのマッチングを市町村が行う場合に、総務省がその経費を特別交付税で措置する支援事業です。本記事では、総務省の担当者による解説をもとに、対象経費・措置額などの制度の骨格と、自治体の取り組み事例、事業承継に活用できる総務省の関連施策を整理します。

内閣府主催「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」の分科会として、株式会社カルティブが企画・運営する『地方創生制度活用シリーズセミナー』。本シリーズは、各省庁で制度を企画・運営する担当者から、制度の詳細な仕組みのみならず「施策に込めた想い」までを直接学べる場として開催しています。

本記事は、総務省 地域力創造グループ 地域政策課(要確認)が登壇した「事業承継人材マッチング支援事業」のアーカイブ動画の内容を網羅的に整理した紹介ページです。まずはテキストを通して制度の全体像や要件を把握し、社内・庁内での検討資料としてご活用ください。その上で、担当者の熱意や具体的な事例の詳細なニュアンスにつきましては、ぜひページ下部の動画本編よりご視聴されることをお勧めいたします。

※本記事は(要記入:2026年9月8日)のセミナー開催時点の情報です。最新情報は総務省の公式サイトをご確認ください。

1. 事業承継人材マッチング支援事業とは?総務省が特別交付税で措置する市町村向けの支援

事業承継人材マッチング支援事業は、市町村を交付の対象とし、令和7年度(2025年度)から新規に始まった支援事業です。後継者不足や人手不足に悩む地域企業と多様な人材とを市町村がマッチングする場合に、その経費を総務省が特別交付税として措置します。

背景として、総務省は制度官庁と呼ばれる省庁であり、経済産業省や中小企業庁のような事業者向けの補助金は所管していません。その代わりに自治体への財政支援(地方財政措置)を担っており、本事業もその枠組みの中で設計されています。

マッチングの対象となる人材と地域

地域が求める人材として、セミナーでは次のような例が挙げられました。

  • 事業承継の後継者となる人材
  • プロフェッショナル人材
  • 地域企業を支えるスタッフ
  • 介護・交通の分野で専門的な資格等を有する若者等

こうした人材を求める地域と、特に地域に対して潜在力の高い女性・若者・シニア・外国人・副業人材といった多様な人材との間の効果的なマッチングを支援する場合の経費が対象です。事業イメージとしては、後継者不足・人手不足に悩む地域企業と、地元への就職を希望する若者や移住を希望する若者・シニア・外国人とを市町村がマッチングし、その費用を総務省が措置する形になります。

参考:地方交付税制度(普通交付税・特別交付税)における位置づけ

本事業を理解する前提として、登壇者は地方交付税制度を参考として説明しました。地方交付税は、地方団体間の財政力の格差を解消するため、適正な配分を通じて地方団体相互間の過不足を調整・均衡化することを目的とする制度で、大きく2種類があります。

種類内容令和7年度(2025年度)の交付額
普通交付税標準的な財政需要が標準的な財政収入を上回る財源不足団体に対し交付19兆421億円
特別交付税普通交付税で補填されない特別な事業に対し交付。財源不足団体かどうかの区別なく申請できる1兆2256億円

本記事で紹介する地域力創造グループの施策は、いずれも特別交付税の申請を行い、その措置を受けられる制度です。

2. 事業承継人材マッチング支援事業の対象経費・措置額と要件

対象経費の6区分

対象経費は大きく6つに分かれます。詳細は総務省ホームページに掲載されている本事業の要綱に記載されています。

  1. 人材・事業所等に対する調査に要する経費
  2. マッチングシステム・ウェブサイト構築に要する経費
  3. マッチングトライアルに対する支援に要する経費
  4. 交流会・ワークショップ等の開催に要する経費
  5. コーディネーター等の配置に要する経費(自治体職員の人件費は除く)
  6. 地域人材の育成に要する経費(セミナーを開催する場合の経費など)

措置額の上限と措置率

項目内容
上限額1団体あたり1,500万円
措置率0.5(上限額に措置率をかけた額が交付税として交付される)
留意点措置率は市町村の財政力に応じて変わる

措置率は市町村の財政力の高低によって変動するため、自団体の措置率は事前に確認が必要です。

要件:地方単独事業であること・事業計画に基づくこと

対象経費には1つ要件があり、地方の単独事業であること、かつ自治体が策定する事業計画に基づく経費であることが条件です。この点は注意事項として強調されました。

3. 事業承継支援の2パターンと自治体の事例(那須塩原市・北秋田市・小松市・豊橋市)

市町村による事業承継支援の形は大きく2パターンに整理されています。

  • パターン1:プラットフォームの開設から後継者とのマッチングまで一貫して支援する形
  • パターン2:自治体がプラットフォームを作り、関係機関の連携を通じて支援する形

パターン1:プラットフォーム開設からマッチングまで一貫支援(栃木県那須塩原市・秋田県北秋田市)

栃木県那須塩原市

中間支援事業者や商工会・商工会議所と連携協定を結び、事業承継支援プラットフォームを開設して譲り手と受け手のマッチングを一貫して支援しています。行政が主体となることで事業者が安心して自治体や関係機関に相談でき、それぞれ異なる情報を持つ自治体・中間支援組織・商工会が日々連携することで、効率的・効果的な情報共有ができる点が利点として挙げられています。

秋田県北秋田市

関係機関7者と連携し、事業承継をしたい案件の掘り起こしから後継者とのマッチングまで一貫して支援しています。地域に当たり前にあった店がなくなるという危機感から事業を開始したもので、県や民間の取り組みでは限界を感じる部分を、市町村がマッチングを含めて支援することが有効だという声が上がっています。

パターン2:自治体がハブとなる連携体制(石川県小松市・愛知県豊橋市)

石川県小松市

自治体がハブとなって事業承継支援機関連絡会議を開催し、地域の事業承継支援体制の構築に向けた連携確認を行っています。事業者が気軽に相談できるよう、スマホアプリを使用した事業承継相談窓口も開設しています。各連携機関の強みを相互に活かしながら、地域全体で事業承継支援を高められる点が利点として挙げられました。

愛知県豊橋市

各支援機関の強みを活かして市内のプラットフォームを発足し、市役所の窓口として月2回の個別相談会を開催しています。その後の計画策定やマッチング等は、県の引き継ぎ先につなぐ体制です。

事業承継支援・人材マッチング支援の広報資料(パンフレット・動画)

事業承継支援と人材マッチング支援のパンフレットのほか、マッチング支援事業や事業承継支援に関する動画が総務省ホームページに公開されています。

4. 事業承継に活用できる総務省の関連施策:地域活性化企業人・地域おこし協力隊・ローカル1万プロジェクト

総務省地域力創造グループは、本事業のほかにも事業承継に活用できる施策を所管しています。セミナーでは次の3つが紹介されました。いずれも特別交付税措置の対象となる制度です。

地域活性化起業人(企業派遣・副業型・シニア型)

地域活性化起業人は、地方公共団体が都市部に所属する企業等の社員を一定期間受け入れ、そのノウハウや知見を活かして地域独自の魅力や価値の向上につながる業務に従事してもらう取り組みに対し、特別交付税措置を行う制度です。

類型開始時期
企業派遣(企業から社員を派遣する方式)平成26年(2014年)
副業型令和6年度(2024年度)
シニア型令和7年度(2025年度)

地方公共団体は民間企業の専門知識やノウハウを活用して地域課題の解決を図れ、民間企業側も多彩な経験による人材育成や社会貢献、新しい地域との関係構築、個人にとっては退職後の新たな活躍の場の発見といったメリットがあります。令和7年(2025年)には企業派遣・副業型・シニア型を合わせて1,215人が企業人として活躍しています。登録・活用のためのマッチングプラットフォームも用意されています。

地域活性化起業人活用事例

企業派遣型例:群馬県富岡市

群馬県富岡市のABC CookingStudioがオリジナルの紅茶を民間事業者と共同開発した例

副業型例:北海道中富良野町

社会教育活動への協力を通じて街の魅力を色にした万年筆インクプロジェクトや親子ワークショップを運営した例

シニア型:香川県高松市

定年退職後にゆかりのある地域で経験を活かしたいという企業人からのアプローチで制度活用が実現した例

地域おこし協力隊

地域おこし協力隊は、都市地域から過疎地域等の条件不利地域に住民票を移し生活の拠点を移した者を、地方公共団体が隊員として委嘱する制度です。隊員は概ね1年以上3年以下の期間、地域に移住し、地域ブランドや地場産業の開発・販売・PR、農林水産業への従事、住民の生活支援などの地域協力活動を行いながら、その地域への定住・定着を図ります。

令和7年度(2025年度)の隊員数は8,196人で、隊員数1万人を目指しています。約70%が同じ地域に定住しており、定着を図るという目的は概ね達成されています。

事業承継に関する事例として、北秋田市の伝統的な技術である秋田八丈(要確認)の後継者不足に対し、協力隊として後継者となる人材を登録・受け入れた例と、譲り手と買い手をマッチングさせる事業に協力隊として従事し、後継者不在の事業者の調査・掘り起こしや営業サポートセンターの設置を活動内容とした例が紹介されました。

ローカル1万プロジェクトと地方単独事業

ローカル1万プロジェクト(要確認)は、産学金官の連携により地域で新しい事業を創業する場合に国からの支援を受けられる制度です。要件は次の5つで、国の有識者審査で認められた事業が対象となります。

  1. 地域密着型
  2. 地域課題への対応
  3. 地域金融機関による融資等
  4. 新規性
  5. モデル性

また、国の補助事業に準ずるものとして地方単独事業の枠組みもあります。国の補助事業に認定されない場合でも、地域密着型・地域課題への対応・金融機関による融資・新規性の要件について、市町村において有識者の審査または商工会議所の確認を経て該当すると認められた事業は、地方単独事業として特別交付税措置を得られる場合があります。事例は総務省ホームページやパンフレットで公開されています。

5. 事業承継人材マッチング支援事業の活用に向けた留意点と情報収集先

  • 対象経費の詳細は、総務省ホームページに掲載の事業承継人材マッチング支援事業の要綱で確認する
  • 措置率は市町村の財政力に応じて変わるため、自団体の条件を確認する
  • 地方単独事業であること、自治体が策定する事業計画に基づく経費であることが要件
  • 地域活性化企業人は2026年10月、ローカル1万プロジェクトは2027年1月頃に、総務省地域力創造グループの担当者が別途セミナーで説明する予定(要確認)
  • 施策担当者の一覧は登壇資料の末尾に掲載

登壇者は締めくくりとして、事業承継の問題は多くの自治体が抱えているものの、財政状況が厳しく取り組みを進めにくい自治体もあるため、セミナーやホームページを参考に本事業を活用し、人材支援に活かしてほしいと述べました。

総務省「事業承継人材マッチング支援事業」セミナー動画

本記事で全体像をご確認いただいた後は、総務省担当官の言葉で直接制度の留意点や実例のニュアンスに触れていただける、以下のアーカイブ動画(約22分)をぜひご視聴ください。

  • [00:00:00] 司会挨拶・登壇者紹介
  • [00:01:33] 本日のメニューと関連セミナーの案内
  • [00:02:44] 参考:地方交付税制度(普通交付税・特別交付税)の仕組み
  • [00:05:18] 事業承継人材マッチング支援事業の概要と対象
  • [00:06:49] 対象経費の6区分と要件
  • [00:08:07] 措置の上限額と措置率
  • [00:08:40] 事業承継支援の2パターンと【事例】栃木県那須塩原市・秋田県北秋田市
  • [00:10:56] 【事例】石川県小松市・愛知県豊橋市と広報資料の案内
  • [00:12:57] 地域活性化企業人(企業派遣・副業型・シニア型)の概要と事例
  • [00:16:51] 地域おこし協力隊の概要と事業承継での活用事例
  • [00:19:12] ローカル1万プロジェクトと地方単独事業の要件
  • [00:21:34] 質疑:参加者に持ち帰ってほしいポイント

登壇者情報・総務省セミナー開催概要

  • 登壇者:総務省 地域力創造グループ 地域政策課(要確認) 井上 満郁子 氏(氏名の漢字表記は要確認)
  • 登壇者略歴:令和5年総務省入省。神奈川県庁への出向を経て、令和6年より総務省総合通信基盤局消費者契約適正化推進室。令和8年7月より地域力創造グループ地域政策課にて勤務し、地方への人の流れの創出・拡大、地域経済の循環促進、地域の暮らしを守る取組を進めている。
  • 開催日:2026年9月8日(火)10:00〜10:30

※本記事は登壇時点の制度内容に基づくものです。制度は改正される可能性があり、また次年度予算が確定しているものではありません。最新の要件は総務省のホームページでご確認ください。

まとめ|特別交付税で市町村の事業承継マッチングを支える総務省の支援策

事業承継人材マッチング支援事業は、市町村が地域企業と多様な人材をマッチングする経費を、総務省が特別交付税で措置する令和7年度(2025年度)開始の制度です。対象経費は調査・システム構築・トライアル支援・交流会・コーディネーター配置・人材育成の6区分で、1団体あたり上限1,500万円に措置率0.5をかけた額が交付され、措置率は市町村の財政力で変わります。地方単独事業であり自治体の事業計画に基づくことが要件です。自治体の取り組みはプラットフォーム開設からマッチングまでの一貫支援と、自治体がハブとなる連携体制の2パターンに整理できます。あわせて、地域活性化企業人・地域おこし協力隊・ローカル1万プロジェクトも事業承継に活用できる特別交付税措置の施策として紹介されました。

よくある質問

Q. 事業承継人材マッチング支援事業の申請主体は誰ですか?

A. 市町村が交付の対象です。総務省が市町村のマッチング経費を特別交付税として措置します。

Q. 措置額はいくらですか?

A. 1団体あたり1,500万円を上限額とし、これに措置率0.5をかけた額が交付税として交付されます。措置率は市町村の財政力に応じて変わります。

Q. 自治体職員の人件費は対象経費になりますか?

A. コーディネーター等の配置に要する経費は対象ですが、自治体職員の人件費は除かれています。

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